2.東京湾アクアラインの構造

2つの人工島と海底トンネル、橋で構成されています。

東京湾アクアラインの建設は世界で最大規模の海洋土木工事でした。設計から施工まで、すべてにわたって最先端の技術とノウハウを結集して進められ、数多くの新技術・新工法が開発、実用化されました。
東京湾アクアラインは、川崎側から9.5km区間がシールドトンネル、木更津側から4.4kmが橋梁で、トンネル区間の中央に換気施設をもつ川崎人工島、トンネルと橋梁の接続部には休憩施設がある人工島“海ほたる”があります。2つの人工島は施工段階ではシールドマシンの発進基地として利用されました。
陸上部は、川崎側の浮島取付部が首都高速湾岸線や川崎縦貫道路からトンネルへのアプローチ区間になります。木更津側の盛土上には料金所が設けられ、東京湾アクアライン連絡道を通って、館山自動車道や建設中の首都圏中央連絡自動車道に接続します。
東京湾は恒常的に船舶が過密に航行しており、東京湾アクアライン付近の海域は1日当り約1,400隻の船舶が通過します。特に大型船舶は水深が比較的深い川崎側を通過するため、ここに橋梁を通すには船舶航行上の支障となる懸念がありました。
加えて、川崎側の浮島JCT付近には羽田空港があり、空域制限のため吊橋の主塔のような高い構造物を設置することができません。
このような条件の下で検討を重ねた結果、川崎側は、当時の技術的な進歩が著しいシールドトンネル工法が経済比較上有利であるとの結論に達しました。
一方、木更津付近は浅瀬が広がっており、大型船舶の航行も少ないことから、経済的に有利な橋梁構造としました。
道路構造は、片側2車線の合計4車線で、設計速度80km/hです。

ルートは複雑で軟弱な地盤

地形は路線のほぼ中央の水深が28mで、川崎側は水深以上が続き、木更津側は海岸線から1.5kmの区間は2mより浅い干潟となり、湾央部にかけて向かって次第に深くなる形状です。
地質は極めて軟弱な粘性土層が20~30m厚で堆積し、木更津側も軟弱な地盤が薄く広がり、その下に砂と粘土層の互層が堆積する構造です。

東京湾アクアラインの総延長は15.1kmで海上部の延長が14.3km、陸上部の延長が川崎側、木更津側合わせて0.9kmです。

過去47年間の記録を調べた気象・海象

東京湾の風は平均秒速5m以上で、かなりの強風もしばしば吹きます。潮流は海面下3mと海底面上3mでの平均が秒速15~27cmの範囲であり、川崎沖で速く、木更津で遅い点が特徴です。波は、東京港入口では波高50cm未満が87%、湾央部でも83%程度ですが、台風時には3~4mも観測されています。
設計に当たっては、横浜地方気象台による過去47年間の観測記録をもとに、基本風速と設計波を的確に設定しました。

航行安全を守り空域制限もクリア

東京湾には6つの大きな港があり、湾内の船舶航行が頻繁で、船の種類も大型タンカーから小型漁船まで多彩です。計画ルートを通過する航行船舶隻数は1日1,400隻に及び、これらの船舶の航行安全に万全を期しました。
浮島取付部の北側に羽田空港があり、厳しい空域制限のために高いタワーをもつ構造物は設置不可能です。その上、建設時のクレーンや杭打ち機の高さも制限されています。

地震多発地帯で緻密に検討した安全性

東京湾地域は、関東大震災に代表されるように、かなり大規模な地震が発生しています。湾央から半径300km以内の範囲で、1885~1979年の間に発生したマグニチュード6.5以上の地震の記録をもとに、各構造物の耐震設計は、耐用年数を100年として、L1地震(交通が阻害されない程度の被害)とL2地震(人命を守り、復旧可能な損傷は許すが、崩壊は防止)を前提に進められました。

最新の気配りで実施した環境保全対策

木更津着岸地一帯は盤州干潟と呼ばれ、のり養殖が盛んで潮干狩りでも知られる海岸です。これらの漁場の魚介類や周辺陸上部の動植物に影響を与えないように、工事前、工事中の環境アセスメントを徹底して行い、情報を公開しました。工事中の大気汚染、騒音、海上汚染対策も周到に実施しました。

浮島取付部

川崎浮島ジャンクションからトンネルへのアプローチ区間です。
浮島取付部は、シールドマシンの発進基地となる立杭、トンネル換気塔、トンネルが海底部に達するまでの約700mの斜路盛土部からなっています。上部は換気所となっています。

トンネル出入口と浮島換気所。トンネルは右から川崎方面行(上り線)、木更津方面行(下り線)。換気所は、ピラミッド状に組んだ鋼管で覆った。

ピラミッド状に組んだ鋼管の近景

トンネル部

浮島取付部から海ほたるまでは、直径13.9m、延長約10kmの海底トンネルで結ばれています。最も深いところは海面下60mにも及びます。
トンネルの建設は、高水圧で軟弱地盤という条件下で切羽の安定と止水を確保するため、密閉型シールドマシンを使用しました。

海ほたるの上り線トンネル標識

風の塔

風の塔は、東京湾アクアトンネルのほぼ中央に造られた直径193mにも及ぶ円形の人工島です。工事中はシールドマシンの発進基地となり、完成後はトンネルの換気施設となっています。

左側の小塔のスリットは排気口。換気機能を向上させるための空気力学的な配慮に加えて、量感のある、視認性に優れた構造。色彩はさわやかなマリンストライプとした。

海ほたる

海ほたるは、道路がトンネルから橋に移り変わるために造られた人工島です。
この人工島は、シールドトンネルが海底部に達するまでの斜路盛土部、シールドマシンの発進基地となる立杭、陸上施設が立地する平坦部盛土から構成されています。

海ほたる(木更津人工島)

豪華客船をイメージした休憩施設。テントは船の帆に見える。1階から3階は駐車場、4階はショッピング・アミューズメント施設、5階はレストランなど。

海から見た海ほたるの夜景

橋梁部

海ほたるから木更津側着岸地点まではアクアブリッジ(橋梁)で結ばれます。この橋梁の延長は約4.4kmです。耐震性と走行性の向上を目的として多径間連続化を図り、9~11径間の大規模な連続桁構造(鋼床版箱桁形式)としました。

木更津川から見た橋梁。滑らかな連続性のあるバランスのとれた景観を目指して、橋脚はY型に、橋桁は桁高を変化させた。