未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「日本一」の称号を受け継ぐ茶師の挑戦

究極の茶葉と秘伝の園

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.115 |10 JUNE 2018
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#2僕らがふだん飲んでいる日本茶とは?

山の中腹を切り拓いた東頭の茶園。標高800メートル。

 東頭のことを知ったのは、別の仕事で日本茶インストラクターのブレケル・オスカルさんのインタビューをしたことがきっかけだった。スウェーデン人ながら日本茶に魅了されて来日したブレケルさんは、現在、日本茶の伝道師として国内外を駆け巡っている。日本茶に精通するブレケルさんが「今、日本一だと思います」と話していたのが、東頭だった。もちろん、価格のことではなく、味の評価だ。

 小杉さんが作る東頭を扱う唯一の原料茶メーカー「葉桐」の葉桐清巳社長も、「日本一」と太鼓判を押す。
「栽培から製造工程まで、良いお茶を作るためにできること、考えつくことをすべてやっているのが東頭です。私は40年この仕事をしていますが、ここまで徹底的にこだわって作っているお茶は見たことがありません」

 ここで東頭と小杉さんの話をする前に、あまり知られていない日本茶の世界について触れようと思う。僕もそうだったけど、日本茶に詳しくない人なら、え、そうなの!? とビックリすること請け合いだ。

 まず、日本で栽培されているお茶の品種について。なんと75%は「やぶきた」という品種で、僕らが普段、なにげなく飲んでいるお茶のほとんどが「やぶきた」である。
 そして、一般的に売られている茶葉は売り物になる過程で均一品質、大量生産、安価提供を実現するために、軒並み「ブレンド」されている。要するに、「〇〇茶」という商品は、たくさんの生産者から集めた茶葉を混ぜ合わせて作られているのだ。世の中にはたくさんの日本茶が売られているけど、シンプルに言えばほぼやぶきたのブレンド茶なんです。

 この事実を知った時、なるほど! と納得した。僕は日本茶が好きで、いろんな産地のものを買って飲むんだけど、ぶっちゃけ、そんなに味の違いが判らなかった。僕が買うお茶は高いものではないし、味音痴の可能性もあるとはいえ、例えばワインみたいにハッキリとした差異は感じられなかった。その理由がやぶきたという品種、ブレンドという作り方にあったのだった。

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未知の細道 No.115

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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