未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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思い出から生まれる「未来」のカケラ

諏訪の「リビルディング・センター」はただの古材屋ではありません!

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供= ReBuilding Center JAPAN
未知の細道 No.87 |25 March 2017
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#2カフェのある古材屋

 カフェには、隅々まで気持ちが良い空気で満ちあふれていた。古材がふんだんに使われているせいか、反射する光が柔らかい。そこにいるだけで、ゆるゆると体の緊張が解けていく、そんな感じ。大きなテーブルでは、赤ちゃんを連れた女性がゆったりとコーヒーを飲んでいた。

「こんにちは、川内です」

 カウンターの中で働く女性に挨拶すると、「こんにちは」とにっこりと微笑み返してくれた。彼女が華南子さん(以下、カナコさん)。
 そして、カフェの一角では、ひょろりと背の高い男性が、いかにも楽しそうに何かの打ち合わせをしていた。彼が東野唯史(以下、アズノさん)。
 そう、この夫婦が、リビセンを作った人たちだ。

 ほのぼのとした雰囲気のリビセンだが、その目的意識はくっきりと明快、そして実現したい未来はけっこう壮大だ。
「ReBuild New Culture(新しい文化を再生する)、って僕らは言ってます。日本は、潰されていく空き家がとても多いし、過疎化が進んで人口が減っていく中で、空き家はますます増えていくでしょう。だから、壊される時に、その材料が『資源』としてストックされる仕組みができるといいなというのが、そもそもの始まりです」(アズノさん)
 それは、解体業者、家主、買いに来る人も誰もが得する仕組みだという。
「解体屋さんも、もったいないと思いながら、どうしょうもないから捨てているし、家主さんもご先祖様に申し訳ないと思ってる。だから材料だけでも誰かに使ってもらえたいと思ってる。そして、古材を求める人は、気軽に買えるようになる。全員がハッピーになる仕組み」

 大切にされてきた家の一部を、誰かが引き継いでいく。
「過去」だったものが「未来」になる。
 それが、彼らがRebuildしたい「文化」だ。しかも、彼らはその新しい文化を日本中に広めていきたいと考えている。
 それにしても、まだ30代になったばかりという若い二人がこんなシステムを作ってしまうなんて、すごいぞ! とワクワクしながら、インタビューは始まった。

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未知の細道 No.87

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。