未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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駿河竹千筋細工唯一の女性職人

竹ひごで描く曲線美に惹かれて

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.94 |10 July 2017
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#218歳で弟子入りを決意

繊細かつ地道な作業が何時間も続く。工房には静かな時間が流れていた

 静岡の掛川市出身の神谷さん。高校2年生になり、進路を決めるときには「技術を身に着けて、ずっと続けられる仕事をしたい」と職人を志していた。しかも、実家の近隣に竹藪があるような「田舎の入り口」に住んでいたため、身近な素材である竹を使った竹細工に興味を持っていたという。

 まさに駿河竹千筋細工の継承者にもってこいの人材だが、高校2年生の神谷さんは京都にある工芸の専門学校に進学しようと考えていた。東西に長い静岡では西側と東側で文化圏が異なるそうで、駿河竹千筋細工がある静岡は東、掛川市は西の文化圏だったため、駿河竹千筋細工のことを知らなかったのだ。

 ところが、偶然にもその年に静岡で伝統的工芸品の全国大会があり、静岡にも竹を使った伝統工芸があることを知った神谷さんは「見に行ってみよう」と家族で会場へ。そこで初めて駿河竹千筋細工を目の当たりにした神谷さんは、その曲線美に一瞬で魅せられた。

 もっとよく知りたい! と思った神谷さんは、静岡の伝統産業と歴史をテーマに様々な体験メニューを用意している施設「駿府匠宿」に足を運び、静岡竹工芸協同組合の当時の理事長、黒田英一さんに会いに行った。それから間もなくして、駿河竹千筋細工の職人になろうと心に決めた。

「黒田さんの工房にもお邪魔してどんなことをするのか見せてもらったのですが、竹という素材が熱を加えることで曲がったり、形が変わるというのが驚きでしたね。全く知らない世界だったから面白かったし、興味が湧きました。正直、そのときは仕事として稼げるかどうかは考えていませんでした。やりたいことを仕事にできたらいいなって」

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未知の細道 No.94

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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