未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
108

千葉県柏市

世界中の老若男女に愛されてきた楽器、ギター。読者のあなたも、弾いたことはなくても、一度は見たり触れたりしたことがあるかもしれない。それぐらいギターは、ポピュラーな楽器の一つだと言えよう。手賀沼の近くの森に、一軒のギター工房がある。そこにはさまざまな素性の、壊れたギターが持ち込まれ、凄腕のギター・リペアマンによって直され、また持ち主の元へと戻っていくのだという。そんな知る人ぞ知る工房「ソーンツリー」を訪ねてみることにした。

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.108 |25 February 2018
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
埼玉県秩父市

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#1噂のギター・リペアマン

 柏市の手賀沼の近く。人家のほとんどない、田んぼと小川の風景のなか、車を走らせる。不意にナビは急な坂道を登らせ、ますます人気の無い森の中へと進む。
 本当にこんなところにギター工房なんかあるのかしら……と思うのと同時に、ナビの案内が終わった。道路の左側には、木立を背にしてポツンと一軒だけ、小さな四角い建物が立っていた。この外観はシンプルすぎるほどシンプルで、例えるなら白っぽい箱のようでもあり、なかで何をやっているのが全然わからない、そんな印象の建物だった。
ここが目的地なのかなあ、と思って車を停めて降りてみると、前掛けをした、男の人が出てきたのであった。

 ギター工房「ソーンツリー」に行こうと思ったきっかけは、柏市に住む知り合いの音楽家が、その存在を教えてくれたからだった。
——最近知ったのだけれど、柏市内に知る人ぞ知るギター工房がある。看板も上げずに、凄腕のリペアマンが、たった一人でたくさんのギターやさまざまな弦楽器を修理している——
 自身も弦楽器の演奏家として国内外で活躍している知人の話を要約すると、このような感じだった。そうか、ギターという楽器があれば、ギター・リペアマンという職業もあるのか、とギターに疎い私は、少しびっくりしたのだった。
 それは興味ありますねえ、と私が返すと、「とにかく同じ柏市内の、しかも辺鄙なところに、こんな工房があるなんて、灯台下暗しでした。それにそこのギター・マイスターが、なんというか……仙人みたいな生き方の人なんです」とその音楽家はさらに続けて教えてくれた。

 そんなことを思い出しながら、前掛けをした男性に挨拶すると、やはりこの男性こそが、ここ「ソーンツリー」のあるじ、斎藤弘幸さんだった。私が生まれて初めて会う、ギター・リペアマンでもある。「こんにちは、今日はよろしくお願いします」といって出迎えてくれた斎藤さんに促され、私は工房の中へと足を踏み入れたのだった。

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未知の細道 No.108

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。