浮世絵イメージ
  • 江戸風俗十二ケ月之内 六月 山王祭
  • 楊洲周延
  • 国会図書館所蔵
    • 将軍家も一緒に楽しむ天下祭り

      6月の日吉山王権現の山王祭、9月の神田明神の神田祭は、江戸っ子の意地と誇りをかけた祭りです。山王権現は将軍家の産土神であり、江戸城を中心に南西の鎮守の神です。神田明神は江戸の自主神、江戸総鎮守でした。このため将軍家や幕府との結びつきが強かったのです。この2つの祭りは幕府の命により盛大に行われ、行列が江戸城に入ることを許され、将軍の上覧が行われたので、「天下祭」「御用祭」といわれました。

      江戸の華といわれた天下祭りは、山車、屋台、曳物、囃子、踊りなどの芸能を主体とする祭りで、その時代の伝統と流行が凝縮されたものでした。山王祭は江戸城東側の町々を豪華絢爛な行列が回り、巨大な象の造り物が江戸っ子の度肝を抜いたそうです。

      神田祭は神田、日本橋地区が氏子だったため、江戸っ子の意地と面子をかけた威勢の良さが特徴で、36台もの山車(だし)が、地域を練り歩いたそうです。この祭礼は江戸の繁栄振りを諸大名に示し、将軍家の威光を示す絶好の機会でもあったので、祭礼にかかる費用の一部が幕府から助成されていました。