未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「店主こだわりの一杯」ではなく「一人ひとりの飲みたいもの」が並ぶ店 世界から注目される盛岡の小さなコーヒー店の軌跡

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.274 |10 February 2025
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#9世界的メディアがもたらした影響

SPRUDGEでの選出をきっかけに、少しずつ外国人客が増え始めたが、驚くほどの変化はなかった。同店が世界的な注目を集める決定打となったのは2023年、ニューヨーク・タイムズで取り上げられたことだった。

同紙が発表した「2023年に行くべき52カ所」で盛岡市が選ばれ、記事内で「盛岡城跡公園」「BOOKNERD」「開運橋のジョニー」などの人気スポットに並び、「Nagasawa COFFEE」も紹介されたのだ。

「ニューヨーク・タイムズに取り上げられた店として、国内のテレビ番組でも多く紹介されました。『スッキリ』や『ひるおび!』『めざまし8』など全国放送の番組だったので、海外だけではなく、国内のお客様も一気に増えたんです」

店内は連日大勢の客で溢れ、ゆっくりとコーヒーを楽しめる空間ではなくなってしまった。これほどの混雑は想定したことがなく、長澤さんは対応に頭を悩ませた。だが、「お客様にはゆったりとコーヒーを味わってほしい」という信念を貫き、席が埋まったらそれ以上のお客様には外で待ってもらうことにした。店の外には常に長蛇の列ができていた。

同店で焙煎した豆を取り扱うオンラインショップにも、注文が殺到。毎日入る100〜200件のオーダーに、社員4人とアルバイト数人では対応しきれず、一時的にオンラインショップを閉鎖せざるを得なくなった。この状態が数カ月続いたそうだ。

世界的なメディアの評価がもたらした影響は、あまりにも大きかった。だがここから、さらに広く派生していく

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