未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
278

埼玉県秩父郡

天然氷の生産・販売を手掛ける蔵元はいま、日本に6軒しかない。そのうちのひとつが、埼玉県秩父郡の阿左美冷蔵。1992年に天然氷のかき氷専門店開き、かき氷ブームの火付け役と称される。凍えるような大雪の日、夏には3時間待ちの行列ができる人気店を訪ねた。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ、ファム フォン タオ
未知の細道 No.278 |10 April 2025
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埼玉県秩父郡

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#1真夏の入道雲のような氷の山

「蔵元秘伝みつ 極みスペシャル」(1600円)。氷の見た目が屋台で売っているものとまったく違う。

「きれい……」と、思わず感嘆の声が漏れた。

埼玉県秩父郡の阿左美冷蔵6代目、阿左美幸成さんが運んできた天然氷のかき氷は、モコモコふわふわしていて、真夏の入道雲のようだった。日の光に照らされて、白く発光しているように見える。

僕がイメージする屋台のシャリシャリしたかき氷とはまったく異なるフォルムで、なにもいわれなかったら、この白いモコモコがかき氷と気づかないかもしれない。

蔵元秘伝の「みつ」が氷に沁み込んでいく様子をじっと眺める。

阿左美さんが、蔵元秘伝の「みつ」をかける。真白な入道雲の上空を旋回する容器から、高級砂糖「和三盆」を用いた「みつ」が垂れる。それが氷に沁み込み、黄金色に色づいていくさまは、なにか静謐な儀式のようにも見えた。

これが、真夏になると3時間待ちの行列ができるという阿左美冷蔵のかき氷。でもこの日、店内には誰もいなかった。取材の日は大雪で、臨時休業になっていたのだ。僕は、貸切状態の店内で、氷の山を崩さないようにスプーンを差し込んだ。

真冬のかき氷、お味はいかに?

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。