
この世の果てか、世界の終わりか。野付半島は地図で見ると悪魔の尻尾のような形に見える。3,000年ほど前に海流により運ばれてきた砂が堆積して生まれたというこの半島は、その後もゆっくりと尻尾が伸びるように形を変えている。その地形の変化により陸地で育った木々が海水に侵食されることがある。その結果が「トドワラ」と「ナナワラ」の姿である。トドワラはトドマツ、ナナワラはミズナラの成れの果て。骸のように白骨化したその姿は異様というほかなく、吸う水が変わるだけで立ち枯れてしまう木々の弱さを知ることができる。
野付半島のような特殊な地形でなくても、汚染された水を吸った木々はトドワラやナナワラのように死んでしまうことだろう。
トドワラに関しては、昨年時点では見ることができたそうだが、僕が訪れた2015年の夏時点で、ほぼ消滅してしまっていた。風化の速度は人間が思うより速い。変わりゆく絶景、それは地球上のすべての場所に言えることだろう。
----その絶景は、いつまでもそこにあるとは限らない。----

ライター 志賀章人(しがあきひと)