
道を選ぶときは、海岸線を通る道を選びたくなる。太古の昔から、その気持ちは変わらないのではないだろうか。日本全国どこへ行っても海岸線に道はある。しかし、函館から日本海側を北上する途中にある“せたな町”を通過するには、これまで内陸を通る国道229号線しか選べなかった。正確には、道道740号線が海岸線に沿って走ってはいたが「未貫通」だったのだ。その工事は困難を極め、現代の技術でも開通が遅れに遅れていた。が、最近になってようやく開通したという。
その道を走ってみると、理由はすぐに察することができる。海、のち絶壁。左手には綺麗な海が広がっているのだが、右手には迫ってくるような壁がある。トンネルもやたらと多く、やたらと長い。きっと崖崩れも多いのだろう。写真のように寸断されて、そのままあきらめてしまったかのような道がいくつもある。その圧倒的な自然を前に行き止まる、その体験は不思議と心を打つのであった。
----人類と自然が対峙した跡に着目せよ。----

ライター 志賀章人(しがあきひと)