綾子さんと知代さんが「今日は飲めないと思いますけど、お鍋とお酒も合うんですよ」と言うのを聞いて、自分が車で来たことが残念で仕方なかった。あまり話さず、いつも優しい笑顔を浮かべている律行さんが「泊まっていってもいいんだよ」と言ってくれて、危うく今日何度目かの「お願いします!」と言ってしまいそうだった。


2種類の鍋の後は、律行さんが育てたリンゴと洋ナシの食べ比べ。既にお腹がパンパンだったはずなのに、甘くてジューシーで結局、もりもり食べてしまった。ビックリしたのは、木村家ではリンゴの皮の色や形状を見て「これは○○」と品種がわかること。さらに、「これは蜜がたくさん入っていて甘い」「これはイマイチ」とリンゴや梨の味の違いにとにかく敏感。さすが生産者とその家族!
木村家は、敦子さんの面白トークに子ども3人が突っ込みを入れ、律行さんが笑顔で見守るという構図だった。敦子さんは僕にも時おり鋭い質問を投げかけてくるのだけど、唐突に「それで川内さんは、一億、稼いでるの?」と聞かれたときには、リンゴを吹き出しそうになった。
あっという間に時間が過ぎて、気づけば22時に。「楽しかったです。いい夫婦の日にお邪魔しました。本当にありがとうございました!」と挨拶したら、敦子さんが「私たちも楽しかったです。ありがとう!」と言ってくれて、リンゴとサバ缶をお土産に持たせてくれた。
南部町の11月22日は、心も身体もほっこり温かくなる格別な日だった。東京に戻ってきてから、たくさんの人に南部町の話をしている。また22日に戻ってきたいなあ。そう思いながら、お土産に頂いた木村家のリンゴを食べる。

川内イオ