未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「大人の部活」はじめませんか?

文= 志賀章人
写真= 志賀章人、丹野雄二(一部提供)
未知の細道 No.59 |20 January 2016 この記事をはじめから読む

#7手間暇をかけて鮮度を保つ

朝、市場で売られたモウカの星は、数時間後には店頭に並ぶ。僕は「お魚いちば」で購入

 驚いたのは、その値段。この時期は、心臓ひとつに1000円前後の値段がつくそうだ。サメ一匹につきひとつしかないから、稀少な高級食材なのである。もっとも、旬の時期にはもっと安くなるという。
「本当の旬は5月、6月。今日は200匹ぐらいだけど、盛漁期には1日に2000、3000匹の世界で、横幅1キロある市場がモウカで埋め尽くされるぐらいに並びますよ。だから、価格も半値、3分の1ぐらいになります」
 モウカザメの心臓が食べられるようになったきっかけが「美味しいから」だとしたら、気仙沼でモウカの星が一般家庭で食べられるようになったのは、「たくさん獲れるから」ということなのかもしれない。

 モウカは不思議な魚で、血が抜けるとあっという間に鮮度が落ちてしまう。これは市場で扱われる無数の魚の中でもモウカザメにしか見られない現象で、理由はわからないそうだ。漁師さんはモウカザメの鮮度を保つために船上で血抜きをせずに市場まで持ってきて、市場で解体処理をしている。
 そこまで手間暇をかけているフレッシュなモウカの星だから、おススメの食べ方はスライスしての刺身。気仙沼では酢味噌で食べるのが一般的だ。「刺身だけだと飽きるから」と、野菜炒めに入れることもあるという。

 モウカの星を目の前にしながら熊谷さんの話を聞いていたら、ちょっぴりグロテスクなナマの心臓が美味しそうに見えてきた。
 熊谷さんの許可を得て、ひとりで市場内を見学していたら、運良くモウカザメの心臓を取り出しているところを見ることもできた。
 時計を見たら朝6時。
 眠気も冷めたし、腹も減ってきた。
 あとは、実食あるのみ!
 といっても市場内で食べることはできないし、朝6時ではお店も開いていないから、一度、宿に戻って一休み。

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未知の細道 No.59

ライター 志賀章人(しがあきひと)

「え?」が「お!」になるのがコピーです。
コピーライターとして、核を書くことで、あなたの言葉にならない想いを言葉にします。
京都→香川→大阪→横浜で育ち、大学時代にバックパッカーとしてユーラシア大陸を横断。その後、「TRAVERINGプロジェクト」を立ち上げ、「手ぶらでインド」「スゴイ!が日常!小笠原」など旅を通して見つけたモノゴトを発信中。次なる旅は、夫婦で世界一周!シェアハウス暦8年の経験から、子育てをシェアする未来の暮らしも模索中。
伝えたいことを、伝えたいひとに、伝えられるようになる。そのために、仕事のコピーと、私事の旅を、今日も言葉にし続ける。
「新聞広告クリエーティブコンテスト」「宣伝会議賞」「販促会議賞」など受賞・ファイナリスト多数。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。