
カフェには、隅々まで気持ちが良い空気で満ちあふれていた。古材がふんだんに使われているせいか、反射する光が柔らかい。そこにいるだけで、ゆるゆると体の緊張が解けていく、そんな感じ。大きなテーブルでは、赤ちゃんを連れた女性がゆったりとコーヒーを飲んでいた。
「こんにちは、川内です」
カウンターの中で働く女性に挨拶すると、「こんにちは」とにっこりと微笑み返してくれた。彼女が華南子さん(以下、カナコさん)。
そして、カフェの一角では、ひょろりと背の高い男性が、いかにも楽しそうに何かの打ち合わせをしていた。彼が東野唯史(以下、アズノさん)。
そう、この夫婦が、リビセンを作った人たちだ。
ほのぼのとした雰囲気のリビセンだが、その目的意識はくっきりと明快、そして実現したい未来はけっこう壮大だ。
「ReBuild New Culture(新しい文化を再生する)、って僕らは言ってます。日本は、潰されていく空き家がとても多いし、過疎化が進んで人口が減っていく中で、空き家はますます増えていくでしょう。だから、壊される時に、その材料が『資源』としてストックされる仕組みができるといいなというのが、そもそもの始まりです」(アズノさん)
それは、解体業者、家主、買いに来る人も誰もが得する仕組みだという。
「解体屋さんも、もったいないと思いながら、どうしょうもないから捨てているし、家主さんもご先祖様に申し訳ないと思ってる。だから材料だけでも誰かに使ってもらえたいと思ってる。そして、古材を求める人は、気軽に買えるようになる。全員がハッピーになる仕組み」
大切にされてきた家の一部を、誰かが引き継いでいく。
「過去」だったものが「未来」になる。
それが、彼らがRebuildしたい「文化」だ。しかも、彼らはその新しい文化を日本中に広めていきたいと考えている。
それにしても、まだ30代になったばかりという若い二人がこんなシステムを作ってしまうなんて、すごいぞ! とワクワクしながら、インタビューは始まった。

川内 有緒