そんな大人たちの会話の横で、子どもたちは元気に走り回り、ママたちは麹の発酵をチェックし、お客さんたちはキョンちゃんの赤ちゃんを抱っこし、ギターの音はボロン、ボロンと響き続ける。
それぞれが、それぞれの時間を過ごしている。
ああ、楽しい。ゲストハウスって最高だ。
スタッフのアサさんが、カウンターの向こうで嬉しそうに頷いた。
「そうなんです。ここに来る人のそれぞれの個性によって、毎日のように違う夜があるんです。みんなですごく盛り上がっている時もあれば、誰もが静かに本を読みながらお酒を飲んでいる時もある。それがすごくいい。毎朝、ああ、今日はどんな素敵なお客さんが来るのかなって楽しみで、ワクワクしながらここに来ます」
毎朝ワクワクできるっていいなあ。でも、それは、お客さんにとっても同じだ。普通のホテルだったら、誰とも出会わずないままに一日を終える。しかし、ここでは、その日偶然に居合わせた人と出会い、旅の世界がブワッと広がる。
すっかりほろ酔いになったので、皆さんに「おやすみなさい」と告げて、11時頃に布団に入った。すると、布団の中がいい感じにホカホカしている。宿の気遣いで、すでに湯たんぽが入っているようだ。
ああ、あったかい、あったかい。なんて、あったかいんだろう。
今日私は、いったい何人の地元の人と話をしたことだろうと思ったが、もはや数えられなかった。
さあて、もう寝ないと。なにしろ、明日は朝5時半に温泉に行って、またあの地図を持って、ぶらぶらするんだ。
明日はどんな1日になるんだろう?
なにひとつ想像もつかないことが、たとえようもなく贅沢だった。

川内 有緒