チャンドラニさんは、どうしてここまでインド人のために動くことができるのだろう。そう聞いたら、チャンドラニさんの思いは少し違っていた。
「私は西葛西をインド人のための街にしたいわけじゃない。何人とかどこから来たとか、そういうのはその人のひとつの側面でしかないんです。西葛西が目指すのは、インターナショナルを超えて、コスモポリタンという考え方だと思っています」
コスモポリタンとは、全世界の人々を自分の同胞だという思想を持つ人のこと。「地球市民」とも言われている。そう、彼が目指しているのは、インド人のための環境づくりだけではない。
西葛西で毎年秋に行われる、ディワリというインドの祭りがある。300人ほどで始まったインドの収穫祭は、毎年参加人数が増え、今では8,000人ほどが集まる大きな祭りだ。今年で18回目をむかえるこの祭りを、チャンドラニさんは「地域の祭りだ」と言う。
「ディワリはインドの祭りだけど、インド人のための祭りじゃない。地域に秋の祭りがなかったからやっているだけで、それがたまたまインドの祭りだということです。インド人しか来ちゃいけないわけでもないし、誰でもウェルカム!」
最初は異国からきたインド人たちが過ごしやすい環境を作るところから始まったリトルインド。しかし今では、国籍を問わず過ごしやすい街になってほしいと願っているのだ。
「国籍という側面は違っても、芯はみんな同じ。そしてその芯は、『同じ人間だ』ということなんです。人間として、自分が自分らしく生きられる場所になればいい」
チャンドラニさんの話を聞いていると、隣のテーブルに日本人の家族連れが座った。チャンドラニさんを見て、たちまち笑顔になる。ご近所に住むという彼らはチャンドラニさんとも親しく、よくこの店にも食事に来るという。
「小さい子どもが当たり前のように他文化を受け入れて、ナンが食べたいとここに来る。これはすごく素敵なことじゃないですか」

ウィルソン麻菜