未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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荒川とガンジス川は繋がっている!

インドの人々と巡る、東京インド旅。

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.97 |25 August 2017
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#3国籍を超えて

真顔が少しこわいインドの人たちは、笑顔がとても素敵だ。

 チャンドラニさんは、どうしてここまでインド人のために動くことができるのだろう。そう聞いたら、チャンドラニさんの思いは少し違っていた。

「私は西葛西をインド人のための街にしたいわけじゃない。何人とかどこから来たとか、そういうのはその人のひとつの側面でしかないんです。西葛西が目指すのは、インターナショナルを超えて、コスモポリタンという考え方だと思っています」

 コスモポリタンとは、全世界の人々を自分の同胞だという思想を持つ人のこと。「地球市民」とも言われている。そう、彼が目指しているのは、インド人のための環境づくりだけではない。

 西葛西で毎年秋に行われる、ディワリというインドの祭りがある。300人ほどで始まったインドの収穫祭は、毎年参加人数が増え、今では8,000人ほどが集まる大きな祭りだ。今年で18回目をむかえるこの祭りを、チャンドラニさんは「地域の祭りだ」と言う。

「ディワリはインドの祭りだけど、インド人のための祭りじゃない。地域に秋の祭りがなかったからやっているだけで、それがたまたまインドの祭りだということです。インド人しか来ちゃいけないわけでもないし、誰でもウェルカム!」

 最初は異国からきたインド人たちが過ごしやすい環境を作るところから始まったリトルインド。しかし今では、国籍を問わず過ごしやすい街になってほしいと願っているのだ。

「国籍という側面は違っても、芯はみんな同じ。そしてその芯は、『同じ人間だ』ということなんです。人間として、自分が自分らしく生きられる場所になればいい」

 チャンドラニさんの話を聞いていると、隣のテーブルに日本人の家族連れが座った。チャンドラニさんを見て、たちまち笑顔になる。ご近所に住むという彼らはチャンドラニさんとも親しく、よくこの店にも食事に来るという。

「小さい子どもが当たり前のように他文化を受け入れて、ナンが食べたいとここに来る。これはすごく素敵なことじゃないですか」

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未知の細道 No.97

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。