未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
100

[ 第100回特別企画 ]街にこぼれる素敵な音を追いかけて

常磐自動車道を行く!〔後編 福島・宮城編〕

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
録音・編集= 白丸たくト
未知の細道 No.100 |25 October 2017
この記事をはじめから読む

#16番外編 仙台宮城IC 市場で行き交う人々の声

「朝市」の通りを歩く

 さて埼玉県にある三郷ICを起点に常磐自動車道を北上しながら、13のICを降りてさまざまな音の風景を見てきたのだが、常磐自動車道は鳥の海スマートICの次の亘理ICが終着である。ここからは仙台東部道路、仙台南部道路を抜けて仙台宮城ICで降りる。この旅の最終目的地は、仙台なのだ。

 仙台は私が好きな街の一つだ。人がたくさんいて、素敵な美術館や歴史的な建物があって、美味しいものが食べられて、それから友達もたくさん住んでいる。私が住む水戸の町からでも、仙台は決して遠い街ではなかった。常磐線や常磐自動車道でいつでも出かけられる街だ。ところが東日本大震災のあと、しばらくは水戸からでは電車でも車でも大きく迂回せねばならなくなり、仙台は私にとって少し遠い街になってしまっていた。2年前に常磐自動車道が開通してからは、また行きやすくなってホッとしていたところだったのだ。

 久しぶりの仙台は、アーケードのある商店街や並木が続く大通りを歩くだけでも楽しい。都会の真ん中に大きな並木があるのは、仙台ならではの風景であり、それだけでもなんとなくワクワクする。働く人も観光客らしき人たちもたくさんいて、震災後の復興の拠点として、仙台はとても活気があるという印象だ。
 駅の近くの有名な「朝市」の通りにも行ってみた。朝市とはいうけれど夕方までやっている、仙台の台所のような場所であり、街の人から観光客まで、いつもたくさんの人で賑わっている。私も何回か行ったことがあるけれど、震災後には訪れていなかったので、久しぶりに通ってみることにした。
 久々の朝市は以前に来た時と変わらず、人が溢れてお店の人たちの元気な声が響いていた。こんな市場が駅のすぐそばにあるなんて、と毎度びっくりしてしまうのだが、ピカピカの鮮魚や生牡蠣、野菜や果物が、道路にはみ出さんばかりに並んでいる。スーパーではあまり見かけないアケビや珍しい野菜などもある。たくさんあって目移りしてしまう。何かお土産に買っていこうかしら、と思わずにはいられないのだ。
 ああ、こうしてまた気軽に仙台に来よう、と私は思った。

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.100

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。