
茨城県水戸市
茨城県水戸市の繁華街、その片隅にある映画館。映画が上映されるのは主に夜の1回だけだが、マイナーで良質な作品をかけることから、映画好きたちから一目置かれている映画館だ。そしてここのプログラム・ディレクターは、新進気鋭の映画監督でもある。映画監督の企画による映画館「CINEMA VOICE(シネマボイス)」と映画監督・鈴木洋平の魅力とは——。
最寄りのICから【E6】常磐自動車道「水戸」を下車
最寄りのICから【E6】常磐自動車道「水戸」を下車
水戸の街なかをまっすぐ通る国道50号。水戸の最大にして唯一の目抜き通りだ。水戸駅から歩くこと30分ほど、水戸の中心地の端っこに大工町という昔からの繁華街がある。バブルの頃は今よりもっとギラギラした町で、「女の子がひとりで行っちゃいけません」とか「水戸の歌舞伎町」なんて巷では言われたりもしていたけれど、今ではその頃よりだいぶ落ち着いた。飲み屋街の入り口、大工町の交番の前に毎晩いる客引きのお兄さんたちも、一昔前よりはずっとのんびりしているように見える。
その交番の前にある雑居ビルの4階に、一風変わった映画館がある。と言ってもそこに映画館があるかどうかは、一見しただけでは、まずわからない。
20年近く前、そこは確かに「パンテオン」という名の映画館だった。水戸育ちの私も、高校生の頃、たまに行っていたから間違いない。でも現在のこの雑居ビルは見たところ、映画館の看板らしきものは掲げていない。飲み屋やクラブが入っているだけだ。件の4階も、ワンフロアを占めている店は「VOICE(ボイス)」という水戸の若者が集まるクラブなのだ。

松本美枝子