草刈りや施設、用具の修理などにかかる費用は開校日などにお祭りを開いて、出店の売り上げでまかなっているという。ここまでお話を聞いただけでも、その自主独立の精神に万歳三唱を贈りたい気持ちになった。でも、まだサプライズがあった。
先述したように、うしづま水辺の楽校の会場では子どもたちが大騒ぎしながら川魚や沢がになど水辺の生物を採っている。たくさん採れた子どもに「見せて」と言うと、誇らしそうに魚を入れた虫かごを見せてくれた。
それだけの生物が生息している環境自体が素晴らしいんだけど、なんといっても子どもにとってのメインイベントは魚のつかみ取り。世話人会が開校日とお盆と最終日の計3回、子どもたちのために数百匹のアマゴ(マスの一種)を放すのだ。開校日に放すというアマゴを見せてもらうと、どれも10センチは優に超えていて、なかには30センチを超えるものもいる。
「この魚、どうしてるんですか?」という僕の質問に対する荻野さんの答えに、思わず「えーーーっ!」とのけぞった。
「養殖してるんだよ。10万匹」
「え、水辺の楽校のために?」
「そう。阿部川フォーラムの時代から。何割かは漁業組合に卸してエサ代にしてるけどね。世話人会のメンバーみんなで世話してるんだ。エサをあげたり、掃除をしたり。それで水辺の楽校が始まると、2年ぐらい育てて大きくなった魚を連れてくるんだよ」
なんということでしょう! 全国約280カ所の水辺の楽校のなかでも、子どもたちのために10万匹の魚を自分たちで養殖しているところはほかにないと思われます。

川内イオ