未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「アーカスプロジェクト」は世界と守谷をつないでいる

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.127 |10 December 2018
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#825年目のアーカスに向けて

コーディネーターの石井瑞穂さん

 さて国内外のたくさんのアーティストたちの活動成果を見ながら、話を聞いて過ごすうちに、あっという間に夜の7時になっていた。コーディネーターの石井さんが「今日は忙しくて、ゆっくり話せなくてごめんね!」と、そばに寄ってきてくれた。アーティストと訪れる人たちの間に立って、一日中忙しくしていた石井さんは、このアーカスをもう20年以上も知っている。
 守谷からも近い、東京藝術大学の取手校舎で学んでいた石井さんは、大学生のうちから、ボランティアとしてアーカスにずっと関わってきた。そして自分もアーティストとして活動するかたわら、2012年からはここのコーディネーターとして働いている。

 「だから自分はアーティストの気持ちも、ボランティアの気持ちも、よくわかるんだよね」という石井さん。石井さんは取材の少し前の日に「アーティストたちがオープンスタジオの初日に向けて、すごく頑張ってインスタレーションを作りこんでいる、今からこの取材に来てもらいたいくらい!」と私にメールをくれたのだ。これまで何人ものアーティストのそばで、その努力を見守ってきた石井さん。こうして今年もまた新しい「オープンスタジオ」が開かれ、それにたくさんの人が訪れてくれるように広報活動を行うことも、石井さんの大事な仕事のひとつだ。

 アーカスはアーティスト・イン・レジデンスとしての歴史は古いけど、その根幹はずっと変わってない。一貫しているのが、アーティストへの支援と地元との交流だ。それを体現できる場所として、そのクオリティを維持してきたのだ、と石井さんは語る。そして実際にすでにアーカスは<MORIYA><ARCUS>として世界に通じる場所になった、と石井さんたちスタッフは自負している。今日話したジハドたちアーティストたちの姿や、これまでアーカスが輩出してきたアーティストの活躍ぶりを見るとそれも納得できる。

 では25年目のアーカスプロジェクトの目標は何ですか? と私が尋ねると石井さんは、「今まで世界のアーティストを支援してきたように、これからは世界で活躍する日本人アーティストの支援も積極的に行いたいのがまずひとつ。そしてもっともっと、地元や周りの日本の人たちに知ってもらえるアーカスにしたいな」と笑って答えてくれた。

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未知の細道 No.127

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。