さて国内外のたくさんのアーティストたちの活動成果を見ながら、話を聞いて過ごすうちに、あっという間に夜の7時になっていた。コーディネーターの石井さんが「今日は忙しくて、ゆっくり話せなくてごめんね!」と、そばに寄ってきてくれた。アーティストと訪れる人たちの間に立って、一日中忙しくしていた石井さんは、このアーカスをもう20年以上も知っている。
守谷からも近い、東京藝術大学の取手校舎で学んでいた石井さんは、大学生のうちから、ボランティアとしてアーカスにずっと関わってきた。そして自分もアーティストとして活動するかたわら、2012年からはここのコーディネーターとして働いている。
「だから自分はアーティストの気持ちも、ボランティアの気持ちも、よくわかるんだよね」という石井さん。石井さんは取材の少し前の日に「アーティストたちがオープンスタジオの初日に向けて、すごく頑張ってインスタレーションを作りこんでいる、今からこの取材に来てもらいたいくらい!」と私にメールをくれたのだ。これまで何人ものアーティストのそばで、その努力を見守ってきた石井さん。こうして今年もまた新しい「オープンスタジオ」が開かれ、それにたくさんの人が訪れてくれるように広報活動を行うことも、石井さんの大事な仕事のひとつだ。
アーカスはアーティスト・イン・レジデンスとしての歴史は古いけど、その根幹はずっと変わってない。一貫しているのが、アーティストへの支援と地元との交流だ。それを体現できる場所として、そのクオリティを維持してきたのだ、と石井さんは語る。そして実際にすでにアーカスは<MORIYA><ARCUS>として世界に通じる場所になった、と石井さんたちスタッフは自負している。今日話したジハドたちアーティストたちの姿や、これまでアーカスが輩出してきたアーティストの活躍ぶりを見るとそれも納得できる。
では25年目のアーカスプロジェクトの目標は何ですか? と私が尋ねると石井さんは、「今まで世界のアーティストを支援してきたように、これからは世界で活躍する日本人アーティストの支援も積極的に行いたいのがまずひとつ。そしてもっともっと、地元や周りの日本の人たちに知ってもらえるアーカスにしたいな」と笑って答えてくれた。

松本美枝子