さてアーカスプロジェクトでは今まで紹介したメインプロジェクトとは別に、去年から新しい、もうひとつプロジェクトが始まった。「エクスチェンジ・レジデンシー・プログラム」である。こちらは日本人の若手アーティストの支援が対象の1つだ。毎年、相手国のレジデンス団体と連携し、その国のキュレーターを日本に、日本人アーティストをその国へ派遣し、お互いがそこで滞在制作やリサーチを行う、というプログラムだ。2018年度は、日本からは高川和也さんと青柳菜摘さんという2人の映像作家が選ばれた。
2人は既にこの夏にスコットランドでの滞在制作を行っており、その成果展を今年度中にアーカスで行う予定だ。そしてこの日の夕方、オープンスタジオに合わせて、2人の過去作品の上映会が行われるという。
実は私にとっても2人は以前から、作品をもっと見たいと思っていた存在であった。だから取材の日には2人の上映会もあると知り、心の中で、ラッキー! と思っていたのだ。
独特なアプローチで、人間の生き方や心の本質に鋭く切り込んでいく高川さんの映像、そして静かだが畳み掛けるようなナレーションとそれに呼応する字幕で、見るものを引き込んでいく物語を生み出す青柳さん。全く違うタイプの映像作家だが、どちらもとても興味深い作品で、上映会に参加した人たちからも様々な質問や感想がとんでいた。
2人の報告会も楽しみだし、この「エクスチェンジ・レジデンシー・プログラム」は、これからのアーカスのもうひとつの面白い看板になっていくのではないかな、と思わせる上映会だったのだ。

松本美枝子