未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「アーカスプロジェクト」は世界と守谷をつないでいる

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.127 |10 December 2018
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#7新しいプログラム

高川和也さんの作品《Ask the self》(撮影:加藤甫)

 さてアーカスプロジェクトでは今まで紹介したメインプロジェクトとは別に、去年から新しい、もうひとつプロジェクトが始まった。「エクスチェンジ・レジデンシー・プログラム」である。こちらは日本人の若手アーティストの支援が対象の1つだ。毎年、相手国のレジデンス団体と連携し、その国のキュレーターを日本に、日本人アーティストをその国へ派遣し、お互いがそこで滞在制作やリサーチを行う、というプログラムだ。2018年度は、日本からは高川和也さんと青柳菜摘さんという2人の映像作家が選ばれた。
 2人は既にこの夏にスコットランドでの滞在制作を行っており、その成果展を今年度中にアーカスで行う予定だ。そしてこの日の夕方、オープンスタジオに合わせて、2人の過去作品の上映会が行われるという。
 実は私にとっても2人は以前から、作品をもっと見たいと思っていた存在であった。だから取材の日には2人の上映会もあると知り、心の中で、ラッキー! と思っていたのだ。

詩的な映像作品を作り、注目されている青柳菜摘さん

 独特なアプローチで、人間の生き方や心の本質に鋭く切り込んでいく高川さんの映像、そして静かだが畳み掛けるようなナレーションとそれに呼応する字幕で、見るものを引き込んでいく物語を生み出す青柳さん。全く違うタイプの映像作家だが、どちらもとても興味深い作品で、上映会に参加した人たちからも様々な質問や感想がとんでいた。

上映の前に自作について説明する高川和也さん

 2人の報告会も楽しみだし、この「エクスチェンジ・レジデンシー・プログラム」は、これからのアーカスのもうひとつの面白い看板になっていくのではないかな、と思わせる上映会だったのだ。

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未知の細道 No.127

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。