さてライチョウが移動すると思われる時間まで、まだもう少し時間があった。ここで1Fのミュージアムカフェ・ショップ「もるげんろーと」でお昼休憩を取ることにした。このショップにはライチョウやカモシカ、そして登山や山岳に関するグッズが並んでおり、山好きなら思わず手に取りたくなるようなものばかりだった。
奥のカウンターでメニューを見ると、長野名物おやきやコーヒー、紅茶のほかに、さまざまな中国茶の銘が並んでいる。普通の喫茶店ではめったにみかけない高級中国茶、「白茶」も置いてあるではないか! 実は中国茶に目がない私は、この博物館のなかで白茶が飲めるとは思ってもいなかったので、さっそく頼んでみることにした。するとマスターが柔らかな関西弁で「白茶、知ってはるんですか?」とにこにこしながら聞いてくる。そして、なんとテーブルの脇で説明しながら、中国茶をお点前してくれたのであった。
一口飲んでみるとさすが白茶、文句なく美味しい! 傍のマダムも「山から湧く美味しい水を使っているので、お茶もコーヒーも美味しく淹れられるんですよ」と教えてくれて、水出しコーヒーと、その上さらに温かいコーヒーまで、いただいたのであった。コーヒー豆は「おみの」という豆専門店に、この店用にブレンドしてもらっているという。
これがまた、どちらもスッキリとした味わいで、実に美味しい。雑味がないのは、コーヒー豆の味を、きれいな水が引き立てているのだろうと思った。
マスターの山内優さんと香代子さん夫妻は、関西弁のとおり、もともとは京都に住んでいたのだが、北アルプスが見えるこの街が好きで29年前に移住。5年前にミュージアムショップの委託業者の募集に応募してこの店をオープンした。この街に住むようになってから、他の場所へ旅することがめっきり少なくなったと言う二人。「もるげんろーと」の窓からは、いつも美しい山が見える。まるで絵の中で暮らしているようなものなのだろう。
香代子さんが「北アルプスの朝焼けがね、本当にきれいなんですよ」と、またひとつ教えてくれた。
店の名前の由来になっている「モルゲンロート」というドイツ語は、登山の言葉で、山が朝焼けで赤く輝くことを意味するのだという。