東京の新宿区で生まれ育った阿部さんが、父親の仕事の都合で岩手の盛岡に移り住んだのは11歳の時。とにかく好奇心旺盛で、「未知との出会い」がなによりの楽しみだったという女の子は、やがて岩手大学で博物館学を学び、学芸員の資格を取得して、盛岡観光コンベンション協会に就職した。日本や岩手の歴史や文化に通じ、海外も大好きだった阿部さんにとって、もってこいの職場だった。
しかし、湧き上がる好奇心はとどまることを知らず、2005年、26歳の時、「海外で暮らしてみたい」と、イギリスに渡り、現地の日系人材紹介会社で仕事を得て、ロンドンで暮らした。ところがデスクワークが肌に合わず、体調を崩したこともあって2年ほどで退職。
もともと、人間の感覚や表現に興味があったため、アート関係のイベントを企画する仕事に転職しようとしていた矢先に、盛岡に住む父親が倒れた。
そこで、介護をしながらでも自分らしく働ける仕事をしようと気持ちを切り替え、30歳の時、もともと好きだったヨーロッパのアンティークを買い付けて、日本の業者や店舗向けに販売する仕事を始めた。イギリス時代になにか縁があって、というわけではない。アンティークショップのホームページを見て、自分が好きなテイストと合っているなと思ったら、電話をかけて営業した。
「ロンドンの人材会社で働いている時に電話営業もしていたので、ぜんぜん抵抗はありませんでしたね。お店を経営していると、自分で買い付けに行きたくても行けないという方もけっこういるんですよ。それで、少しずつ仕事が増えていきました」