未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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馬駆ける草原から桃源郷の森へ 安比高原で馬と暮らし、生きる

文= 川内 イオ
写真= 川内 イオ
未知の細道 No.147 |10 October 2019
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#8ジェットコースターを降りて

ブナ林を抜けると景色が一変し、今度は一面のススキ野。聞こえてくるのは、黄金色のススキを撫でる風の音だけ。視界には人工物が一切なく、絵画のなかに入り込んだよう。圧倒的な静けさが、ぜいたくに感じる。

阿部さん「ここを馬に乗って歩いたら、気持ちいいと思いません?」

僕「間違いなくヤバいですね」

ススキ野の小道を進んでいくと、また白い木肌が輝くブナ林に入る。その先には、200年の樹齢を誇る、朽ち果てたマザーツリーがあった。その木の洞には苔が生え、新たな生命が宿っている。完全にジブリの世界で、神聖な場所にいるような気持ちになった。

時間にして30分ほどだったけど、何度「ヤバい」と言ったかわからない。こんなに気持ちのいい散策路は初めてで興奮冷めやらず、阿部さんに「ライターさんなのに、ヤバいしか言ってませんね」と突っ込まれて、「それはヤバいっすね」と返すのが精いっぱいだった。

ここに記すとネタバレになってしまうため、あえて書かないが、散策している間、阿部さんが森や樹木について、たくさんの話をしてくれた。ただ歩くだけでもお勧めだけど、ガイド付きで散策すると新しい学びも得られて、充実感も格別だ。

馬と触れ合える草原と、天国のように美しい森をいっぺんに体験できる稀有な場所、それが安比高原。森を歩いている時、阿部さんが口にした言葉が、今も記憶に残る。

「ここにいると、一日に一回は、涙が出そうなぐらい素敵な景色に出会えるんです。私の人生、これまでジェットコースターに乗ってるみたいでした。それも自分で選んだ道だけど、ここで馬に乗り換えようかなって」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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