迎えた2020年1月、研修期間中に妻と3人の子どもを連れて引っ越し。自力で山の樹を切り倒し、ヤギの小屋と放牧場の柵を建て、小屋をチーズ工房にリノベーションした。木工作家の父親が手伝ってくれたそうで、DIYながらデザインも強度もしっかりしたものができたという。
丸2年の研修を無事に終え、2020年8月にチーズ工房の許可を取得。群馬の牧場から借りた雄ヤギがミーちゃん、イソちゃん、ヌマちゃんと自然交配し、それぞれ子どもを生んだので、その頃には3頭とも乳を出すようになっていた。


しかし、ヤギの乳量は出産シーズンの春が一番多く、夏になると減っていき、秋には次の出産に備えて乳しぼりを控えるため、初年度は少量のチーズを作り、近隣の温泉や農協、ショップなどにあいさつ代わりに届けたほか、武蔵五日市駅前で開催される「五市マルシェ」などで販売した。
本格的にチーズ作りが始まったのは、2021年の春。ミーちゃん、イソちゃん、ヌマちゃんに加えて、その子どもの雌ヤギ3頭も出産して「6頭搾り」になり、最盛期には1日およそ20リットルの乳が取れるようになった。その乳で作ったひとつ1000円、約2000個のシェーブルチーズは、見事に売り切れた。
「月に1、2回イベントに出たり、近くの温泉に並べてもらったり、農協に置いてもらったのがほどほどに売れて。あとは個別にチーズショップに卸したりして、なんとか捌けました」