未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
210

東京都あきる野市

脱サラし、東京の山奥でヤギ飼いになった若者がいる。その理由と現在の生活が知りたくて、あきる野市に向かった。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.210|25 May 2022
  • 名人
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東京都あきる野市

最寄りのICから【C4】首都圏中央連絡自動車道「日の出IC」を下車

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#1脱サラしてヤギ飼いに

山の斜面に作られたヤギの放牧場。

堀周(ほり・いたる)さんが山裾の急な斜面をくだっていくと、まだ生まれて数日しか経っていない赤ちゃんヤギたちが、メェメェとかわいらしい声で鳴きながら、慎重な足取りで後をついていく。斜面を登り始めると、ぴょこぴょこ跳ねるようにして、やっぱり後をついていく。堀さんがヤギ小屋の前に腰掛けると、あっという間に子ヤギたちに囲まれ、メェメェメェメェの大合唱だ。

ここは、東京都心から車でわずか90分、東京都あきる野市にある養沢ヤギ牧場。周囲を緑豊かな山に囲まれ、隣家も目に入らず、すぐ近くを清流の川が流れるこの景色だけを見たら、ここが東京だとわかる人はいないだろう。

養沢ヤギ牧場の脇を流れる小川。

堀さんは、山の斜面を切り拓き、手作りの柵で囲ってヤギを放牧し、その乳でチーズを作っている酪農家であり、チーズ職人だ。住まいは、ヤギ牧場の隣りに建つ築約100年超の古民家で、妻と幼い子ども3人と暮らしている。

養沢ヤギ牧場のある一帯はスマホの電波が通じておらず、家の脇まで一本の細い道路が通じているものの、その先は行き止まり。基本的に、養沢ヤギ牧場に用事がある人が訪ねてこない限り、家族以外の人間の姿を見ることはない。耳を澄まさなくても、聞こえてくるのは川のせせらぎと、鳥の鳴き声、そしてヤギのメェメェだけ。

山深く、人の気配のないエリアだからか、周囲は野生動物の宝庫。シカ、イノシシ、猿、キツネ、ハクビシン、アライグマが生息し、「見たことはないけど、クマもいるらしいです」。

「東京じゃないみたいですよね」と笑う堀さんに、僕は「開拓民っていう感じですね」と答えた。ヤギ飼いといえば『アルプスの少女ハイジ』に出てくるペーターしか知らないが、堀さんはペーターとはだいぶ違う人生を歩んできた。東京理科大学を卒業して、企業で勤めた後に脱サラして、2020年、妻子を連れてこの場所で養沢ヤギ牧場を開いている。

なんで?

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。