土屋さんは、生まれも育ちも青梅なので、まさにここら辺が地元だ。近所に蛍が飛んでいるようなきれいな環境だったが、小学校の同級生たちはみんなファミコンに夢中。そんな中、土屋少年は森の中を駆けずり回り、川に飛び込んで魚を捕まえた。学校から借りた孵卵器に卵を入れて、今か今かとヒヨコの誕生を待つような子どもだった。
少年の父親は消防士で、夜勤が終わって家に戻るなり、「釣りに行くぞ!」と飛び出すような人だった。父親は息子に、川魚を捕まえ方や口笛で鳥を呼ぶ方法を教えた。
「小学校3年生くらいの時、他の家では危ないから川には近づいてはいけないと言われてたみたいだけど、僕は逆に川には宝があるから、どんどん川に行けと言われていた。自分で何が危ないかを知らないといけない。もしそれでお前が死んでも、お前の責任だと。おかげで本当に溺れそうになった時もありましたけどね」と土屋さんは懐かしそうに話した。今の時代そんな親は、とてもレアだろう。
高校生になった少年が好きな科目は、やはり生物。当時から、免疫とかNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性化などの話を聞くのが大好きだった。NK細胞は、免疫機能の一つで、体内に異常な細胞が現れた時に、それを攻撃する非常に重要な防衛機構である。
入部した生物部では、フライフィッシングが大好きな先生が顧問だったので、しょっちゅう釣りに出かけた。すでに、「森林セラピスト」としての芽吹きを感じさせるが、その頃は「森林セラピー」などという職業はこの世に存在していなかった。

川内 有緒