しかし、これで奇跡は終わらない。
庭田さんから、今夜鍋をするというNさんに直接連絡してみて、と言われて電話をかけたところ、非常に紳士的な雰囲気のNさんは「仕事の都合で、何時から食べ始めるかわからない。あまり遅くなると申し訳ないから、自分が探します。ちょっと待っててください」という。
やっと見つかったと思ったのに……という少し残念な気持ちもあったけど、見ず知らずの男の「鍋に混ぜてほしい」というわけのわからない願いを聞いて、「自分が探します」と言ってくれるNさんの温かい気持ちを感じて、僕はスマホに向かってまた「宜しくお願いします!」と頭を下げていた。
庭田さんをはじめ、お店の方々も「いったいどうなるんだ!」と緊張気味にNさんからの連絡を待つ。
数分後、Nさんから電話がかかってきた。「やっぱり見つかりません」ということも十分にあり得るので、気を静めて電話に出たんだけど、「見つかりました!」という第一声を聞いて、僕は「え、ほんとですか!!!」とまた大きな声をあげてしまった。話を聞くと、Nさんがラインとフェイスブックで呼びかけてくれたらしい。なんでそこまでしてくれるのか……僕は、声しか知らないNさんに何度も何度もお礼を言って、電話を切った。
Nさんが紹介してくれたのは、木村敦子さん。電話をしてみると、その声から明るい雰囲気が伝わってくる方で「どうぞ、お待ちしてます!」と言ってくれた。
奇しくも、住所はチェリーセンターの方面。僕は名前以上にほのぼのとしたほのぼの館の皆さんに厚くお礼を伝えると、ケクー・カフェに立ち寄ってお土産用にケーキを買い、また先ほど通った道に車を走らせた。

川内イオ