
「いったいどうやって竹林を切り開くんですか」
「まずはチェーンソーで細かい木や藪を取り払う。大きな木を切り倒して片付けた後、土地を平らにする」
なんだかイージーなスリーステップのようにも聞こえるが、実際には気が遠くなるような重労働である。竹やぶの中には、無数の藪蚊が飛び回り、イノシシが泥浴びをしていた。
さっきのスリーステップを延々と繰り返ししつつ、猟銃免許も取得してイノシシとは真っ向対決(ますます、西部開拓劇だ)。しかし、終わりの見えない作業は肉体的にも精神的にもきつかった。腕や肩を痛め、原因不明の頭痛にも悩まされた。しかもイノシシ側は全く諦めない。最近もイノシシと衝突した車が廃車になったそうだ。
思わず「あの、気持ちが折れる瞬間はなかったですか?」と聞いた。
「折れてるヒマ、ないです。そんなヒマがあったら木を切りたい」という淡々とした口調が決意を感じさせる。
一方の淳さんは、「俺は、作業は一切しない」と宣言していたので、手伝ってくれない。しかし、それは気にならなかったという。
「それよりも、いつも笑みを絶やさない穏やかな彼がそばにいてくれこと。一緒に腹を抱えて笑いあうこと。そして、一日の終わりに美しい夕日を見ることで活力を得ていたように思います」
そう彼女が言う通り、ここで見る夕日は格別なのだそうだ。

川内 有緒