
ムムム!! 一気に鼻息が荒くなった。
何を隠そう、僕は子どもの頃の夢が「ムツゴロウ王国で働くこと」だったほど動物が好きで、なかでもダントツの一番はゾウ。駆け出しフリーライターをしていた26歳の頃には、日本人として初めてゾウ使いになった実在の若者を描いた映画『星になった少年』を観て激しく感動し、早逝したその若者の家族が作った「市原ぞうの国」に、「働かせてください」と暑苦しい手紙を送ったこともある。
サファリパークでゾウと触れ合う仕事は、まさに僕のドリームワーク! さすがに今から転職する勇気はない。でも、どんな仕事なのか、体験させてもらえないだろうか? 26歳の頃から変わらず、「思い立ったら当たって砕けろ!」がポリシーの僕は、岩手サファリパークに電話をして、直球勝負。
「飼育係、アニマルトレーナーとして、1日だけ働かせてください!」
「ええ、いいですよ」
支配人の菅野伸夫さんの拍子抜けするほどあっという間の快諾に、ガッツポーズ。
その後に続いた「求人はサルの飼育係なので、サルでいいですか?」という言葉に、僕はもちろんこう答えた。
「あ、ゾウでお願いします! 僕、ゾウが好きなんです!」
穏やかな口調の菅野支配人は、はは、と苦笑しながらも「いいですよ」と認めてくれた。さすがに常日頃、たくさんの動物を相手にしているサファリパークの支配人だけあって、大人げない人間にも懐が深い。

川内イオ