未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
65

“天空のサバンナ”でソンと叫ぶ!

熱狂のゾウ使い1日体験記!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.65 |20 April 2016
この記事をはじめから読む

#2直球勝負で支配人に電話

岩手サファリパークのゾウライドは毎日9時から16時まで営業。2頭のゾウが働いている

 ムムム!! 一気に鼻息が荒くなった。
 何を隠そう、僕は子どもの頃の夢が「ムツゴロウ王国で働くこと」だったほど動物が好きで、なかでもダントツの一番はゾウ。駆け出しフリーライターをしていた26歳の頃には、日本人として初めてゾウ使いになった実在の若者を描いた映画『星になった少年』を観て激しく感動し、早逝したその若者の家族が作った「市原ぞうの国」に、「働かせてください」と暑苦しい手紙を送ったこともある。
 サファリパークでゾウと触れ合う仕事は、まさに僕のドリームワーク! さすがに今から転職する勇気はない。でも、どんな仕事なのか、体験させてもらえないだろうか? 26歳の頃から変わらず、「思い立ったら当たって砕けろ!」がポリシーの僕は、岩手サファリパークに電話をして、直球勝負。
「飼育係、アニマルトレーナーとして、1日だけ働かせてください!」
「ええ、いいですよ」
 支配人の菅野伸夫さんの拍子抜けするほどあっという間の快諾に、ガッツポーズ。
 その後に続いた「求人はサルの飼育係なので、サルでいいですか?」という言葉に、僕はもちろんこう答えた。
「あ、ゾウでお願いします! 僕、ゾウが好きなんです!」
穏やかな口調の菅野支配人は、はは、と苦笑しながらも「いいですよ」と認めてくれた。さすがに常日頃、たくさんの動物を相手にしているサファリパークの支配人だけあって、大人げない人間にも懐が深い。

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.64

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。