未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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“天空のサバンナ”でソンと叫ぶ!

熱狂のゾウ使い1日体験記!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.65 |20 April 2016
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#3バンドマン風の副支配人

一ノ関駅から岩手サファリパークへ向かう車窓より。長閑な風景が広がる

 数日後、岩手サファリパークに向かった。東北新幹線の一ノ関駅から車で約40分。対向車がほとんどこない長閑な山道をグルグルグルグル登っていくと、館ヶ森という高原に着く。牧場や農園が広がるこの広大な土地の一角に、岩手サファリパークはある。
 少し緊張しながら事務所を訪ねると、菅野支配人がきょとんとしていた。いかにも穏やかそうなその目は明らかに「どちらさま?」と問うている。あれれ? と思いつつ、飼育係、アニマルトレーナーの1日体験をさせて頂くという取材で伺いました、と告げると、支配人、思い出してくれたのか「あ~! ネクスコさんの……」と頷いた後、こう言った。 「サルでしたっけ?」
 ずっこけそうになりながら、僕は答えた。
「あ、ゾウでお願いします!」
「あ、そうでしたね」と頷く支配人。そして、僕の案内役に指名されたのは副支配人の中鉢徳博さんだった。
 宜しくお願いします、と名刺を交換しながら、僕の目は中鉢さんにくぎ付けだった。
 細身のパンツにゴツいブーツ、身体にフィットする上着に、重そうな腕時計。眉毛や髪形もビシッと整えられている。どこからどう見ても、渋谷や原宿で良く見かけるようなロックとかビジュアル系のバンドマンだ。
 鷹揚な支配人と、バンドマン風の副支配人。岩手サファリパーク、なんだか面白いぞ。

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未知の細道 No.64

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。