中鉢さんには夢がある。
いつか、2頭のゾウを「ゾウの村」から出して、広々とした岩手サファリパークの敷地内を、ゾウ使いとともに歩かせてあげること。そうすれば、ゾウが喜ぶだけじゃなく、今よりもいきいきとしたゾウの姿を子どもたちに見せてあげることができるからだ。
実現するためには難しい交渉が必要になるけど、国内のほかの施設の状況を見れば不可能な話ではないという。
想像してほしい。
大きなゾウが、気持ち良さそうに草原を歩いている姿を。そのゾウにまたがったゾウ使いが、水牛の角をくりぬいて作った笛「サナイ」を優雅に吹いている様子を。そして、子どもたちがゾウを取り巻き、意外なほどに固い肌やチクチクする毛、ゴムのような手触りの鼻を触わってはしゃいる景色を。
僕はバンドマン副支配人の夢が叶ったら、必ずここに戻ってこようと心に決めた。

川内イオ