未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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山田町で受け継がれる相撲の絆

兄弟弟子で目指す横綱の道!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.66 |10 May 2016
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#6「夢は横綱!」の中学1年生

千代川勇也くんが小学1年生で相撲を始めてからずっと練習相手を務めてきた拓海くんと、二人を指導する顧問の小田島先生

 謙虚で実直な拓海くんは、亡くなった恩師や一緒に練習してきた先輩、ずっと指導してくれた先生の期待に応えようと、ひたすら稽古に打ち込んできた。その背中をずっと追いかけてきたのが、中学1年生の千代川勇也くんだ。
 勇也くんも小学1年生の時から相撲を始めたのだが、同級生にも、年が近い上級生、下級生にも仲間はおらず、5つ年の離れた拓海くんだけが唯一の練習相手だった。
 勇也くんは「友達を誘ってみても嫌だっていう人が多くて、同級生がいなくて寂しかった」と素直に振り返る。しかし、面倒見のいい拓海くんとの稽古によって、勇也くんは見事に鍛え上げられた。幼い頃から恵まれていた体格を活かしたダイナミックな相撲で、小学校時代は岩手県で常に優勝を争う存在だったのである。
 今春、高校3年生と中学1年生になった二人だが、体格はあまり変わらない。勇也くんは、中学1年生にして身長167センチ、95キロという堂々たる体格で、筋肉質ながら小柄な拓海くんよりも一回り大きく見えるほどだ。
 拓海くんが「恵まれた体をしているから、俺より期待できる」と認める勇也くんの夢は、「横綱になること」。
 そう、白鵬関の「この土俵から、自分と対戦する力士が出てきたら成功だと思う」という言葉が実現するとしたなら、その相手は勇也くんになるだろう。

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未知の細道 No.66

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。