未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
66

山田町で受け継がれる相撲の絆

兄弟弟子で目指す横綱の道!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.66 |10 May 2016
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#7弟弟子に託す夢

中学1年生と高校3年生。年は離れているけど、互いに実力を認め合う仲

 13歳の時、「白鵬関に近づけるよう稽古に励みたい」と宣言した拓海くんも、かつては力士を志していたが、高校3年生まで相撲を続けてみて「全国レベルで活躍できない自分には、プロは遠い」と実感したという。だから、今は弟弟子に夢を託そうと考えている。
「高校を卒業したら、勇也がひとりになってしまうので、僕が地元で仕事に就いて、勇也に相撲を教えて活躍させたいんです。勇也の横綱への道を応援したい」
 この言葉を聞いた時、胸が詰まった。
 実は、先に引用した東京新聞の記事にも、この拓海くんの想いが綴られていた。
 なぜ、高校3年生にして、そこまで後輩のために尽くそうと思えるのかを知りたいという疑問から山田町を訪ねたのだ。
 横綱を目指す年の離れた後輩のために、地元で就職して、練習相手を続ける。
 高校3年生の言葉とは思えない熱い想いと覚悟を感じるが、話を聞いて納得がいった。拓海くんはきっと、これまで先輩や先生から受け継いできた山田町の相撲の絆を、唯一の後輩である勇也くんにもつなぎたいという想いがあるのだろう。

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未知の細道 No.66

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
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