
さてアートスクールに入って2ヶ月もたたない初夏、2週間ほど、学校をあげて上海のアートシーンを視察に行くことになった。
2008年の中国といえば、アートバブルに沸きに沸いていた頃である。上海も例外ではなく、さまざまなアートフェアや展覧会が開かれ、次々にギャラリーが建てられていた。
上海に着いて、観光かと思っていたら、展示直前の北海道出身のアーティストの設営を手伝う羽目になってしまった。
わけもわからずに灼熱の上海で、上半身裸になってペンキ塗りなどの手伝いをしているうちに、これなら自分もなにかできるかも! なにか作ってみたい! と思っちゃったんですよね……、と大雅さんは苦笑する。
そう、大雅さんは、なんと最初はアーティストを目指していたのである!
上海から帰って、弁護士の仕事をしながら、アートスクールに通い、作品を作り、次第に個展を行うようにもなった。
初個展の際には「弁護士が現代アートで個展!」という見出しでヤフーニュースの全国トップを飾る、というアクシデント(?!)もあり、弁護士仲間にも、アート活動を行っていることが、すっかり知れ渡ってしまったそうだ……。
そんな仕事に制作活動にがむしゃらに明け暮れていたある日、街中におもしろい物件が出たよ! という情報が入った。
アートスクールの仲間たちと共に自由に使えるラン・スペースが欲しいな、とぼんやりと考えていた矢先のことだった。
躊躇せずにその場所を借り、スクールの仲間たちとともに、企画だけではなく貸し画廊も行うギャラリー兼スタジオとして回し始めることになった。
最初の「サロンコジカ」の始まりだった。



松本美枝子