未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
70

ギャラリストは弁護士先生。

ギャラリー サロンコジカ

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.70 |10 July 2016
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#4最初のスペースのたちあげ

最初のサロンコジカ

さてアートスクールに入って2ヶ月もたたない初夏、2週間ほど、学校をあげて上海のアートシーンを視察に行くことになった。
2008年の中国といえば、アートバブルに沸きに沸いていた頃である。上海も例外ではなく、さまざまなアートフェアや展覧会が開かれ、次々にギャラリーが建てられていた。
上海に着いて、観光かと思っていたら、展示直前の北海道出身のアーティストの設営を手伝う羽目になってしまった。
わけもわからずに灼熱の上海で、上半身裸になってペンキ塗りなどの手伝いをしているうちに、これなら自分もなにかできるかも! なにか作ってみたい! と思っちゃったんですよね……、と大雅さんは苦笑する。
そう、大雅さんは、なんと最初はアーティストを目指していたのである!

上海から帰って、弁護士の仕事をしながら、アートスクールに通い、作品を作り、次第に個展を行うようにもなった。
初個展の際には「弁護士が現代アートで個展!」という見出しでヤフーニュースの全国トップを飾る、というアクシデント(?!)もあり、弁護士仲間にも、アート活動を行っていることが、すっかり知れ渡ってしまったそうだ……。

そんな仕事に制作活動にがむしゃらに明け暮れていたある日、街中におもしろい物件が出たよ! という情報が入った。
アートスクールの仲間たちと共に自由に使えるラン・スペースが欲しいな、とぼんやりと考えていた矢先のことだった。
躊躇せずにその場所を借り、スクールの仲間たちとともに、企画だけではなく貸し画廊も行うギャラリー兼スタジオとして回し始めることになった。
最初の「サロンコジカ」の始まりだった。

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未知の細道 No.70

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。