未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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この町に、またアート・プロジェクトがやってきた!

鯨ヶ丘商店街と「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.78 |10 Ncvember 2016
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#6鯨ヶ丘の文化財

今回、集中曝涼には行けなかったが、鯨ヶ丘の町角には小さな神社やお寺などがたくさんある。

 さて梅津会館に戻ると、サポーターさん(県北芸術祭の運営ボランティアたちのこと)が、一枚のチラシを渡してくれた。なんだろう?
「今日は常陸太田市の集中曝涼(ばくりょう)なんですよ。この周辺のお寺などで文化財を公開していますから、芸術祭と兼ねてぜひご覧ください」と教えてくれた。「曝涼」とは、天気のよい乾燥した日を選んで書籍や衣類などを日にさらし風を通して、かびや虫を防ぐ、いわゆる虫干しのことだ。

 現在は茨城県北芸術祭が行われ、最先端の現代アートで賑わっている常陸太田市だが、一方で城下町としての歴史が古いこの市には、正宗寺(しょうじゅうじ)の雪村筆の滝見観音図をはじめ、国指定や県指定などの文化財が数多くある。市では、年に一度、10月の第3土・日を「市内指定文化財集中曝涼の日」とし、市内各地に保存されている仏像、書物、絵画などの貴重な文化財を一般公開しているのだ。市内全域で行うこの曝涼には、毎年多くの人が訪れ、貴重な文化財を間近で見学することができる。各公開場所では地域の人々がガイドも行っているという。
 この日は鯨ヶ丘を含む常陸太田市内で、現代美術と古美術の両方が見られるという貴重な一日だったわけだ。私はこの後行われる「常陸佐竹市」のイベントに参加するため、残念ながら見に行くことができなかったのだが、また来年、改めて常陸太田市の集中曝涼を見に行きたい! と思ったのであった。

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未知の細道 No.78

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。