
2015年の年末、ポートランドのReBuilding Centerにメールを送った。
メールアドレスは知らないから「お問い合わせフォーム」を利用。内容はReBuilding Centerを日本に作りたいから、名前とロゴを使わせて欲しいというものだ。日本の空き家の増加状況や、自分たちの古材を使った設計の実績も説明をした。
すぐに「OK!ちょっと待ってて、ロゴを送ります」と返信が来た。あっさりと第一関門はクリアである。
「よく許してくれたよね、どこの馬の骨だかもわからないのに」(カナコさん)
それにしても、ただ古材を流通させるだけだったら、「アズノ古材店」にすることもできた中で、あえてアメリカの「リビルディング・センター」を継承しようとしたのはなぜだろう。
「今、古材というと大体アメリカから輸入したものが主なんだけど、日本の古材をちゃんと使った方が循環としていいですよね。そういった考え方を日本全体に広めるためには、僕らみたいな小さな動きで『古材屋を作りました!』というのではなく、ポートランドという注目されている町の「リビルディング・センター」を日本に持ってくるという方がインパクトもあって、広まっていくと思ったんです。それに、僕らがこれからこの店をやっていく中で、『立ち返る場所』が自分たちの場所以外にあるといい。あそこに行けば僕らが求める『未来』があるというような場所。その二つの理由でした」
なるほど、彼らが作りたいのは、ただの古材屋ではなくて、その先にある「文化」なのだ。
マスヤで知り合った人に「この辺(諏訪地域)でリビセンやりたい」と話したところ、地元の建設会社が持っているビルで、20年間空き家になっているところがあるという。天井が高く、面積も1000平米と堂々たる鉄骨三階建て。
友人を介して、「貸してください!」と、その会社に企画書を持ちこむと、トントン拍子に話は進んだ。その年は、その建設会社の創業90周年で、それを機にこの建物を解体しようと話が進んでいた矢先に、二人は滑り込んだ。
「どうぞお使いください」と嬉しい了承を得るなり、怒涛のリフォーム工事が始まった。話を聞いている私も、「おー!」と言いたくなるスピード展開である。
着工の直前には、スタッフ全員でアメリカのリビセンに挨拶にも行ったそうだ。

川内 有緒