未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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思い出から生まれる「未来」のカケラ

諏訪の「リビルディング・センター」はただの古材屋ではありません!

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供= ReBuilding Center JAPAN
未知の細道 No.87 |25 March 2017
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#8大勢の力を借りて

ReBuilding Center JAPAN提供

 それにしても、これだけのものを作るのは、相当におカネもかかるだろうな……と思っていたところ、このプロジェクトでは、総予算の三分の一となる300万円をクラウドファンディングにて支援を募ったそうだ。
 その支援を募集するサイトには、こんな言葉が書かれていた。

 世の中に見捨てられてしまったものに、もう一度価値を見出し世の中に出していく。ゴミだと思っていたけど、磨いたりちょっと違う使い方をしたりしてみたら、すごく素敵になるんだ”そんな体験をひとつ積める場所に、リビセンがなれればいいなと思っています。そういう文化をつくりたい

 しかし、クラウド・ファンディングを立ち上げたのは、着工した後だったと聞いて、「十分な資金が集まるかどうか緊張しませんでしたか?」と尋ねた。するとアズノさんは、「いやあ、社会性があるプロジェクトだし、たぶん大丈夫だと思ってました!」と清々しく答えた。

 その予想通りに、日本全国から続々と支援が集まり、蓋をあけてみると447人から500万円以上もの資金が集まった。
 同時にリノベーション工事の方も、大勢の助っ人を借りて進められていた。アズノさんたちが「お助け隊」を募ったところ、のべ460人もの応募があり、中には本物の大工さんもいたそうだ。お助け隊は2ヶ月にわたって大活躍し、木工や左官、ペイントを行った。

ReBuilding Center JAPAN提供
大勢で工事中のある日、二階の窓の外には大きな虹が見えたそうだ。

 その製作の過程は、今リビセンにある三冊のアルバムにしっかりとドキュメントされている。私は、話を聞きながらアルバムをパラパラと眺めた。そこには、大勢の人が楽しそうな笑顔で壁を塗ったり、掃除をしたり、車座になってご飯を食べたりする写真が収められている。中には、建物の二階の窓から、みんなで何かを眺めている写真も。その時は、巨大な虹が窓から見えたのだそうだ。

 ああ、こうやって一緒に手や頭を動かし、同じ釜のメシを食い、語り、笑い、同じ風景を見ることがRebuild New Culture、つまりは「文化」を作ることにつながるんだなあと感じていた。

 こうして、構想からたったの十ヶ月で、リビルディング・センター・ジャパンはオープン!

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未知の細道 No.87

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。