
そんな二人は、ほどなくして結婚。ここからがまた怒涛の展開なのである。
新婚旅行には、アメリカのポートランドを選んだ。
「ポートランドを選んだのは、いろいろな場所に関わる中で、ポートランドの話を振られることが多くなってきたから。興味もあったし、サンフランシスコやポートランドにも友人が住んでいたし、じゃあ西海岸に行ってみようかと」
アズノさんは、ポートランドに「リビルディング・センター」があることは知っていたが、当時はよくアメリカにある“サルベージショップ”(一種のリサイクル・ショップ)という認識しかなかったという。
しかし、実際のリビルディング・センターに足を運んでみて驚いた。
ものすごい量の古材が売り買いされ、若い人からお年寄りまで、いわゆる建築のプロじゃない人たちが楽しく買い物に来ている。2メートルもある板を自分で運んでいるおばあさんを見て、ここには古材を利用する「文化」がしっかりと根付いているんだと感銘を受けた。
「リビルディング・センターには、僕らが“いいお店”だと思う店の要素が全部詰まっていたんです。お店自体がすごく地域にコミットしていて、一般の人が入りやすくて、お店の人が楽しんでて、お店の人がお店を愛していて。僕らがmedicalaとしてやりたいことが、全部そこにあったので感動しました」(アズノさん)
日本に戻ると、また設計の仕事を手がける中で、もっと身近な場所に古材屋があったらなあ、という気持ちがどんどん膨れ上がった。そう考える間にも、近隣の諏訪地域で古い家がどんどん取り壊されていった。
日本にも、すでにたくさんの古材屋はあったものの、そのどれもが交通の便が悪かったり、値段が高かったり、建築のプロ用だったり。とにかく普通の市民にはアクセスしにくい場所だった。
「安くて、アクセスしやすい場所で、誰かが(古材屋を)やらないかなあ、と二、三年、待ってたけど、現れないから自分でやろうかと思いました。その時に、『あ、あのリビルディングセンターで見たあの景色が、日本にできるといいな』と思った」

川内 有緒