未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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思い出から生まれる「未来」のカケラ

諏訪の「リビルディング・センター」はただの古材屋ではありません!

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供= ReBuilding Center JAPAN
未知の細道 No.87 |25 March 2017
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#6ポートランドの「リビセン」の風景を日本に

ReBuilding Center JAPAN提供

 そんな二人は、ほどなくして結婚。ここからがまた怒涛の展開なのである。
 新婚旅行には、アメリカのポートランドを選んだ。

「ポートランドを選んだのは、いろいろな場所に関わる中で、ポートランドの話を振られることが多くなってきたから。興味もあったし、サンフランシスコやポートランドにも友人が住んでいたし、じゃあ西海岸に行ってみようかと」

 アズノさんは、ポートランドに「リビルディング・センター」があることは知っていたが、当時はよくアメリカにある“サルベージショップ”(一種のリサイクル・ショップ)という認識しかなかったという。

 しかし、実際のリビルディング・センターに足を運んでみて驚いた。

 ものすごい量の古材が売り買いされ、若い人からお年寄りまで、いわゆる建築のプロじゃない人たちが楽しく買い物に来ている。2メートルもある板を自分で運んでいるおばあさんを見て、ここには古材を利用する「文化」がしっかりと根付いているんだと感銘を受けた。

ReBuilding Center JAPAN提供

「リビルディング・センターには、僕らが“いいお店”だと思う店の要素が全部詰まっていたんです。お店自体がすごく地域にコミットしていて、一般の人が入りやすくて、お店の人が楽しんでて、お店の人がお店を愛していて。僕らがmedicalaとしてやりたいことが、全部そこにあったので感動しました」(アズノさん)

 日本に戻ると、また設計の仕事を手がける中で、もっと身近な場所に古材屋があったらなあ、という気持ちがどんどん膨れ上がった。そう考える間にも、近隣の諏訪地域で古い家がどんどん取り壊されていった。

 日本にも、すでにたくさんの古材屋はあったものの、そのどれもが交通の便が悪かったり、値段が高かったり、建築のプロ用だったり。とにかく普通の市民にはアクセスしにくい場所だった。

「安くて、アクセスしやすい場所で、誰かが(古材屋を)やらないかなあ、と二、三年、待ってたけど、現れないから自分でやろうかと思いました。その時に、『あ、あのリビルディングセンターで見たあの景色が、日本にできるといいな』と思った」

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未知の細道 No.87

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

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