
「実際にリビセンをはじめてみて、今どうですか?」
なにか予想外な苦労などがあるかな、と思いながら聞いてみると、「うーん、いいことしかないねえ!」と答えたのはカナコさんだった。
そのからっとした言葉の続きを聞いて、それ、わかりますー、と大いに納得した。
「なんかこう、私は社会人として普通に会社に勤めている時期があったんだけど、こんなに世の中の矛盾を背負って生きていかないといけないのかと思っていたんです。例えばコーヒーチェーンで働いている時は1日100個くらいサンドイッチを捨てないといけなかったり。捨てられなきゃいけないサンドイッチを作らなければいけない人の気持ちになったら、そこに気持ちやエネルギーを込められないだろうなと思ったり。でも、安全とか責任の問題で誰かにあげることはできないし。でも、ここ(リビセン)では、そういう矛盾や諦めなければいけないことがなくなって、正直、気持ちいいです」
捨てなくていいい。諦めなくていい。気持ちを思いっきりこめていい。それを喜んでいるのは、きっと彼女だけではない。大切なものを手放したくないけれど、泣く泣く手放さざるをえないたくさんの人たちが、同じように感じているにちがいない。
リビセンの二階に上がれば、解体の現場からレスキューされた古道具がところ狭しと並んでいる。窓が大きい明るい空間で、私は何をかくそう、この場所がリビセンの中で一番好きだ。
なぜだかわからないけど、すべてのものが愛おしい。
古いガラスがはまった建具、扉、古いソファや扇風機、古時計、そろばん、グローブ、カゴ、鍋、薬箱まで。
ただ雑多なものが並んでいるだけなのに、どこか静謐とした空気が流れている。
本当だったら捨てられていたかもしれないたくさんの品々は、新たな主人をここで待っているのだ。

川内 有緒