未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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ゲストハウスと公共温泉巡りのススメ

下諏訪で見つけたホカホカな旅

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.88 |10 April 2017
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#4ロマンチックな湖畔のお城

 最初に向かったのは、ゲストハウスから歩いて3分の「菅野温泉」。キョンちゃんが一番好きなのは、ここだそうだ。

 レトロなファアードを抜けると、中には番台があり、おばちゃんが一人座っていた。両脇には古い下駄箱がずらり。ここは、なにもかも昭和のまんまだ。

 教えられた通りに、「こんにちは」と小さく声をかけ、浴場の引き戸を開けた。午後3時だというのに、四人ほどの先客がいて、「こんにちは」と丁寧に挨拶を返してくれた。

 その小さな浴場を見渡して、おっ! と思った。ものすごーくメルヘンチックな空間なのだ。明るいピンクのタイルが張り巡らされた浴場の中心には、楕円形の小さな浴槽がちょこんとある。タイルにはヨーロッパのお城の絵。空間全体がとってもかわいらしい。

 私がよほど新参者に見えたのだろう。すぐに小さな男の子を連れたおばあちゃんが「どこから来たの?」話しかけてくれた。

「東京です!」

「まあ、そんなに遠くから、よく来たわねえ!」

「公共浴場巡りをしてるんです」

「あら、いいじゃない!」

 そんな感じで、自然に会話が始まった。日本全国の温泉に行っているが、こんな展開はけっこう珍しい。その人懐っこさを目の当たりにして、異国に来たみたいな気分になる。

「いつもここにきているんですか?」と聞き返すと、「だいたい毎日来てるわね! 家にもお風呂はあるけど、こっちの方がずっといいもの」と微笑んで答える。

 おしゃべりをしながら体を流し、私も湯船に浸かった。キョンちゃん情報によれば、ここのお湯の温度は42℃。

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未知の細道 No.88

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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