未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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駿河竹千筋細工唯一の女性職人

竹ひごで描く曲線美に惹かれて

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.94 |10 July 2017
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#6竹ひごで拓く未来

優美で涼し気な神谷さんの作品。独創性を感じる。

 師匠のもとで膨大な手作業と静謐な時間の先に拡がる世界を間近に見てきた神谷さんは、技術とともに感性を磨いてきた。女性ながらの柔らかさのなかに大胆さも滲む神谷さんの作品の結晶ともいえるのが、修行を始めて15年目という節目に製作した駿河竹千筋細工のトロフィーだろう。

「トロフィーは企画会社のデザイナーと組んで作りました。デザインの勉強はしていないから、新しいものを作る機会を与えてもらっても、なかなか大変です」と神谷さんは謙遜するが、篠宮さんは「いやいや、良い経験をしてますよ」と弟子の活躍に目を細める。
「トロフィーだって、今年もお願いしますと言われていますからね」

 篠宮さんの言葉に、思わず「え!?」と驚くと、神谷さんは照れたように俯いた。聞けば、クライアントが昨年のトロフィーの出来栄えを気に入り、今年も依頼があったという。
 僕が訪れた時はまだ製作途中だったので完成形を見ることはできなかったが、6月最後の週末に開催された「ユピテル・静岡新聞SBSレディースゴルフ」で優勝した選手が掲げた細身のトロフィーは、昨年の作品とはまた違うシャープな優美さを持っていた。

 職人の高齢化が進むなかで、僕には駿河竹千筋細工の今後がどうなっていくのかはわからない。でも、篠宮さんと神谷さんの話を聞いて、竹の想像を超える柔軟性や素朴な美しさには未来を感じた。18歳で修業を始めて16年目、「どちらかといえば、あっという間でした」と振り返る神谷さんは、師匠と同じく一本の竹ひごから駿河竹千筋細工の可能性を切り拓いていくのだろう。

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未知の細道 No.94

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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