未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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駿河竹千筋細工唯一の女性職人

竹ひごで描く曲線美に惹かれて

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.94 |10 July 2017
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#5アバンギャルドな師匠

篠宮さんが製作したトルソー。丸ひごの曲線が絶妙。

 駿河竹千筋細工の職人は静岡竹工芸協同組合の一員として、組合で一括して受けた仕事を分担して請け負う。同じ形のものを数十個、数百個作って納めるという仕事が多い。
 求められるのは常に一定のクオリティを保つことで、慣れないノコギリで竹を切るところから修業を始めた神谷さんは、ひと通りの仕事を自分ひとりでこなせるようになるまでに5年かかったと振り返る。

 篠宮さんのもとにはイレギュラーな依頼もあり、それは神谷さんにとって大きな刺激になった。例えばあるときには静岡市から「トルソーを作ってほしい」という話が来た。当時まだ新人だった神谷さんは見本の採寸などを手伝う程度だったが、その後、著名なインテリアデザイナー、内田繁さんがデザインした茶室「受庵 想庵 行庵」のうち、竹を使った「想庵」の細工の依頼があったときは、篠宮さんとふたりで竹を加工するところから手掛けて、2カ月かけて完成させた。篠宮さんは自分の技術を未知の分野に活かすことに積極的で、こういった「意外な依頼」を楽しんでいるという。

「自分が想像しないような依頼がくるんだから、それは面白いですよ。挑戦しようと思うし、この仕事をやめられなくなりますね」

 駿河竹千筋細工一筋50年を超える篠宮さんは、「伝統」の枠にとどまることなく、デザイナーやクリエイターと組んで野心的な仕事に挑んできた。その代表作のひとつである「想庵」は、欧州各地で展示された。

「篠宮さんは昔から変わった依頼を受けていらっしゃるので(笑)、いつも、こういうこともできるのか、と思いながら見ていました。いろいろ勉強できる環境でしたね」

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未知の細道 No.94

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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