未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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最高級の糖度の秘密

花き栽培の技術が実を結んだ、マンゴー栽培

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.99 |25 September 2017
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#7マンゴーの六次産業化

 マンゴーの旬は7〜8月までと、とても短い。  安定して3000個ほど取れるようになったとはいえ、あまりの美味しさに口コミが広がり、旬の季節にはいつも、やすだ園のマンゴーはあっという間に売り切れてしまう。
 それで保田さんとしつ子さんは、マンゴーの美味しさを一年中味わってもらえるように、加工品にも取り組むことにした。「小美玉SUN完熟マンゴー」の六次産業化だ。皮をむいた新鮮な切り実をパックにして冷凍保存し、一年を通してアイスクリームやジャム、ジュースなどの加工品を自らの手で作っているのだ。

 私もマンゴーのアイスクリームを食べさせてもらった。生のマンゴーとはまた違って、甘みが凝縮されていて、とても美味しい。しかも流通している大手の市販品のように、余計な添加物がほとんど入ってないので、加工品でありながら、マンゴー本来の自然な味わいがする。
 マンゴーが高級品であるがゆえに、加工品であろうともマンゴーのアイスは普通のアイスに比べると、なかなか手に入りにくいものだ。しかも自然本来の上品な甘さであれば、その満足度はひとしおである。美味しいですねえ、と言いながら、花より団子の私は勧められるままに、ペロリと二個も平らげてしまったのであった。

マンゴーのアイスクリームは、茨城空港の物産館、そして空港近くの「空のえき そ・ら・ら」で買うことができる人気商品だ。

 やすだ園では、このマンゴーの加工品が、予約制ではあるが、一年中食べることができる。しつ子さんが作った、フラワーガーデンを見学しながら、アイスクリームやソフトクリームなどのデザートを食べるプランがあるとのこと。研修会などの団体が利用することが多いのだそうだが、一般にも開放している。生のマンゴーはもちろんのことだが、六次産業のマンゴーであっても、一年中食べられるような農園は、東日本ではそうそうない。皆さんもぜひ、やすだ園に行って、味わってみてほしい。

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未知の細道 No.99

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。