
鳥たちのお喋り
水戸の湖と言ったら、真っ先に思い浮かべるのは、街の中心地にある千波湖だ。緑豊かな水辺には様々な鳥が住み、朝から晩までランニングや散歩する老若男女に溢れている。水戸で一番活気がある場所の一つ、と言えるかもしれない。
でもここではあえて、穴場のもう一つの湖を紹介したい。それが水戸ICからすぐそばの「大塚池」だ。千波湖より少し小さい大塚池は、インターを降りて、国道50号沿いにある。国道を走る車から見る大塚池は、ちょっと地味に見えるかもしれない。でも専用の駐車場を降りて、大塚池公園の中を入ってみると、緑が深くて、水鳥たちがたくさんいる、とても素敵な場所だということがわかる。釣竿を持って自転車に乗る少年たち、カメラを構えて水鳥を撮影するおじさん。犬の散歩をしている主婦や小さな子供を連れた若いお母さん。ベンチで井戸端会議をしているおじいさんたち。とにかく、ごく近所の人たちの憩いの場なのだ。
朝早く、水鳥の声が聞きたくて、この近くでギャラリー「PUNTO」を営む甲高さん夫妻に案内してもらった。奥さんの純子さんは、ウォーキングと鳥が好きで、二人でよくここを散歩するのだという。
大塚池は「冬がいいんですよ」と二人は教えてくれた。鳥は秋から冬にかけて、この池に飛来する。これからがいい季節で、冬に向かってだんだん鳥が増えて賑やかになってくるのがワクワクするんです、という純子さん。まるで飛行機のように湖面を飛び立つ白鳥の迫力や、喧嘩する姿がなんだか面白いオオバンなど、さまざまな鳥たちの姿を見るのが飽きないのだという。そんな話をしていると、すぐそばで元気な黒鳥たちが、水面をパシャパシャと進む音が聞こえてくる。


小さいから、すぐに一周できること、人が多すぎなくて静かなことも、大塚池のいいところだ。インターを降りて、すぐに水戸の町に入らずに、ちょっと大塚池で休憩して、鳥たちと、ここが好きで散歩する人たちのさざめきに耳を傾けてほしい。

松本美枝子