未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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[ 第100回特別企画 ]街にこぼれる素敵な音を追いかけて

常磐自動車道を行く!〔前編 埼玉・千葉・茨城編〕

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
録音・編集= 白丸たくト
未知の細道 No.100 |10 October 2017
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#8北茨城IC 五浦の海の音

波の音が入江に響き渡る

 茨城県の最北端、かつて炭鉱の町として栄えた北茨城市にある北茨城ICを降りてしばらく走ると、五浦海岸へとたどり着く。五浦海岸は古来より景勝の地として称えられた場所だ。特に思想家の岡倉天心が、この海を愛し、思索を深めるためにここに「六角堂」を建てたことで知られている。建物と海を見に訪れる人も多く、この町のシンボルであるといえよう。
 夕方、六角堂から見る太平洋は、荒く美しい。寄せては返す波の音は、いつまで聞いていても飽きることがない。
 東日本大震災では六角堂は基礎だけを残し津波に流れてしまった。ここの津波高は10m以上と茨城では最も高く、この辺り一帯の被害も大きかったのだ。現在の建物は、いち早く一年後に復旧予算や寄付によって、創建当初の姿で再建されたものだ。昔と変わらぬ姿で戻った六角堂は、静かに海の際に立っている。
 ひとり旅だろうか、一人の女性がじっと動かずに、暗くなるまで波の音を聞いていた。

 さて北茨城市は、茨城と福島の県境。北隣は福島県のいわき市だ。
 後編はいよいよ、関東を抜けて、東北・福島、宮城へと入る。

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未知の細道 No.100

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。