未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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[ 第100回特別企画 ]街にこぼれる素敵な音を追いかけて

常磐自動車道を行く!〔後編 福島・宮城編〕

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
録音・編集= 白丸たくト
未知の細道 No.100 |25 October 2017
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#13相馬IC 民謡のふるさと 相馬全国民謡大会

今年の相馬民謡全国大会の様子(写真:相馬市)

 広野ICから2年前までは通行止めになっていた区間を走る。現在でも放射線量が高い場所もあるが、福島県浜通りの復興には全線開通が不可欠として、再び開かれた道なのだ。
 そこから少し先の相馬ICのある福島県相馬市は、民謡が盛んなところである。江戸時代の相馬藩の頃から続く、古き良き唄が数多く残されている。
 実は相馬の民謡のことは、私の地元からも近い、茨城県日立市の人々からよく聞かされていたのだった。高度経済成長の頃、日立は工業都市として栄え、日立周辺のみならず、主に東北地方からやってきたたくさんの若者たちが、工場や鉱山で働いていたのだという。秋田や山形、そして福島からやってきた若者たちは、みな歌がうまく、よく地元の民謡を歌ってくれたものだ、と日立に住む70歳代の知り合いたちは教えてくれた。特に日立鉱山で働く福島県人は相馬出身者も多く、相馬民謡をよく日立の山の中で聞いたなあ、という話が、私の中で印象に残っていたのであった。日立のお年寄りが、むかし、相馬の人に教わったといって歌ってくれた民謡は朗々として、とてもいい唄だった。
 その相馬市では毎年10月に相馬民謡全国大会が開かれる。私が相馬ICを通ったのは、ちょうどこの大会の数日前だったのだ。事務局の方を訪ねてみると、この大会に向けてその週はとても忙しく、出場者の人たちも練習に余念がない、とのこと。そして当日は、たくさんのお客さんと出場者の歌声とで会場が盛り上がるのだという。
 たまに日立で聞く相馬民謡もいいものだけど、来年はこの大会で本場の相馬民謡を聞きに、相馬に再び訪れよう、と思って次の目的地に向かうことにした。

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未知の細道 No.100

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。