
いよいよ宮城県に入ったので、山元ICで降りる。山元町もまた、震災の津波で甚大な被害を被った町だ。車を走らせてみると、津波到達地点を表す道路標識が出てくる。
山元ICのすぐそばに、おいしい「はらこ飯」が食べられる、和風レストラン「田園」の山元店という店があるというので、寄ってみることにした。はらこ飯とは、サケの煮汁で炊いたご飯に、サケの身とイクラをのせた宮城県の郷土料理だ。発祥はサケ漁が盛んだった阿武隈川河口の亘理町荒浜と言われているが、亘理町はもちろん、お隣のここ山元町や仙台市でも食べることができる人気料理だ。サケイクラ丼との大きな違いは、何と言ってもサケの身が煮てあることと、煮汁で炊いたご飯が茶色いということだろうか。
山元ICから本当に目と鼻の先にある「田園」山元店は、平日の、しかもお昼の時間帯も過ぎた頃だというのに、たくさんのお客さんで賑わっていた。
初めて食べるはらこ飯は、まず、見た目からとても豪華な料理だった。ホール主任の関口信義さんがサーブしてくれたはらこ飯には、これでもか、というくらいサケとイクラがたっぷりとのせられている。口に運んでみると、ふっくらしたサケとごはんが、ほんのりと温かい。関口さん曰く、秘伝のタレを使ってサケを煮ているのだそう。そして噛むと、イクラが口の中でプチプチとはじける音がする。とにかくおいしいので、箸がどんどん進む。
「はらこ飯は旬のものですから、毎年9月から12月までの限定のお料理なんです。だからお客さんたちも楽しみにしてくれていて、今年もまた食べることができて嬉しい! って言ってくださるんですよ」とにっこりして教えてくれた。
今は10月。まさに宮城の人々が、はらこ飯を食べたくなる季節なのだろう。私もまた来年も、再来年もこれを食べに宮城に来たいなあ……。お客さんが絶えず入ってくるお店の賑わいを耳にしながら、そんなことを思いつつ、完食した。

松本美枝子