未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
100

[ 第100回特別企画 ]街にこぼれる素敵な音を追いかけて

常磐自動車道を行く!〔後編 福島・宮城編〕

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
録音・編集= 白丸たくト
未知の細道 No.100 |25 October 2017
この記事をはじめから読む

#14山元IC 宮城名物 秋の味覚・はらこ飯

 いよいよ宮城県に入ったので、山元ICで降りる。山元町もまた、震災の津波で甚大な被害を被った町だ。車を走らせてみると、津波到達地点を表す道路標識が出てくる。
 山元ICのすぐそばに、おいしい「はらこ飯」が食べられる、和風レストラン「田園」の山元店という店があるというので、寄ってみることにした。はらこ飯とは、サケの煮汁で炊いたご飯に、サケの身とイクラをのせた宮城県の郷土料理だ。発祥はサケ漁が盛んだった阿武隈川河口の亘理町荒浜と言われているが、亘理町はもちろん、お隣のここ山元町や仙台市でも食べることができる人気料理だ。サケイクラ丼との大きな違いは、何と言ってもサケの身が煮てあることと、煮汁で炊いたご飯が茶色いということだろうか。
山元ICから本当に目と鼻の先にある「田園」山元店は、平日の、しかもお昼の時間帯も過ぎた頃だというのに、たくさんのお客さんで賑わっていた。
 初めて食べるはらこ飯は、まず、見た目からとても豪華な料理だった。ホール主任の関口信義さんがサーブしてくれたはらこ飯には、これでもか、というくらいサケとイクラがたっぷりとのせられている。口に運んでみると、ふっくらしたサケとごはんが、ほんのりと温かい。関口さん曰く、秘伝のタレを使ってサケを煮ているのだそう。そして噛むと、イクラが口の中でプチプチとはじける音がする。とにかくおいしいので、箸がどんどん進む。
「はらこ飯は旬のものですから、毎年9月から12月までの限定のお料理なんです。だからお客さんたちも楽しみにしてくれていて、今年もまた食べることができて嬉しい! って言ってくださるんですよ」とにっこりして教えてくれた。
 今は10月。まさに宮城の人々が、はらこ飯を食べたくなる季節なのだろう。私もまた来年も、再来年もこれを食べに宮城に来たいなあ……。お客さんが絶えず入ってくるお店の賑わいを耳にしながら、そんなことを思いつつ、完食した。

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.100

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。