仕事の8割はギターのリペアという斎藤さんだが、オリジナル・ギターの制作も受けている。
RCサクセションにも参加していた人気ギタリスト、故・小川銀次さんも、斎藤さんのオリジナル・ギターを愛用していた一人だ。もともとは楽器店を通した仕事で小川さんと出会ったという斎藤さん。プロの細かいオーダーにきちっと答える、斎藤さんの仕事ぶりを気に入ってくれていたのであろう、小川さんは6本ほどアコースティックギターをオーダーして、使っていたという。
斎藤さんは以前に依頼されて、弦が11本もある、フォルムもあちこち尖った相当変わったギターを作ったこともある。他では製作を断られてしまったというそのお客さんと相談しながら作った、独特すぎるオリジナル・ギターは、愛好家の中でちょっとした評判になり、インターネットで海外の人からも問い合わせがくるほどだったという。
こうやって話を聞いていると、斎藤さんのところに来るのは、修理でも制作でもよそで断られたもの、という依頼が多い。どんなに手間がかかるものでも断らない、それが斎藤流なのであり、お客さんが信頼してくれる秘訣なのかもしれない。
実際、手間はかかるけど、こういう自分にしかやれない仕事が不意にやってくるから、ギターの仕事は面白いのだ、と斎藤さんは語ってくれた。

松本美枝子