未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
109

物語は、夜の街で輝く

映画監督がいる映画館 CINEMA VOICE

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.109 |10 March 2018
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#7繁華街の片隅で青春映画を見る!

 さて鈴木さんへのインタビューもひと段落ついた頃。この日は珍しく、15時からの上映だ。
 今日の映画は『キングス・オブ・サマー』(2013年制作、アメリカ)。これが長編映画制作デビューだったジョーダン・ヴォード=ロバーツ監督による、ティーン・エイジャーの一夏の青春と成長の物語だ。
 そして上映後には、この映画を配給した「グッチーズ・フリースクール」という団体の代表の降矢聡さんのトークがあるという。

 まさにクラブ……! というカウンターでお兄さんに料金を支払い、ラムコークを注文する。ここは2千円で好きな1ドリンクがついて映画が見られるというシステムなのだ。アルコールが中心のメニューだ。それだけでもちょっとお得な感じがするが、この日のようにトークイベントがある時でも同じ料金なので、さらにお得な感じがある。
 劇場内に入ると、大型スクリーンの周りには客席ではなく、赤いソファやスチールのテーブルと椅子。灰皿まである。なんとCINEMA VOICEではお酒を飲み、タバコを吸いながら映画が見られるのである。今時の禁煙ブームにはだいぶ逆行しているけれど……、これはこれで珍しくて面白い。
 そして天井を見上げると、キラキラ輝く巨大なミラーボール……。やっぱり「CINEMA VOICE」は本当にクラブの「VOICE」なんだ、と私は思った。

映画『キングス・オブ・サマー』が始まった。

 さて映画が始まった。
 あの名作『スタンド・バイ・ミー』を思わせるような、青春映画の正統を引き継ぐ展開ではじまるこの映画は、おきまりの喧嘩や思いがけない危険などハラハラする展開もありながら、現代っ子の軽やかさもあって、最後はクスッと笑えて、ハッピーな気分で終わる。
 ユーモアがある映画が好きだし、それが一番大事だと語っていた鈴木さんが選んだ映画、という感じがした。良い映画だった。

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未知の細道 No.109

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。