続いて、グッチーズ・フリースクールの降矢さんと、鈴木さんのトークが始まった。この映画を配給したグッチーズ・フリースクールは、日本未公開映画の紹介、上映を企画・運営する団体だ。降矢さんは、映画の批評、脚本などを手がけながら、配給も行っている。実は鈴木さんはトーク前に、私にこんなことを言っていた。「僕が降矢さんの活動のファンで、ずっと呼びたかったんです」そんなことを思い出しながら、二人のトークを聞き始める。
降矢さんたちグッチーズ・フリースクールでは、映画の配給権を買う際に、「純粋に好きなもので、上映後に見た人たちの気分が上がるような映画を選んでいる」という。そして降矢さんはこの『キングス・オブ・サマー』は、コミュニティで生きていくことを丁寧に描いているのも良かったから選んだ、ということを熱く語っていた。
さらに二人はこの映画の見どころを丁寧に説明し、また出演している俳優たちのことや、その後の活躍なども詳しくトークしてくれた。
中でも一番良かったエピソードは、ジョーダン・ヴォード=ロバーツ監督が、この映画を作ったすぐに後に『キング・コング:骸骨島の巨神』(2017年)の監督に抜擢された、という話だ。
小さな映画を作った先に、大きな映画がつながっているなんて、なんだか夢のある話だ。CINEMA VOICEで見るには、ぴったりの映画じゃないか。
トークが終わった後、降矢さんと鈴木さんに話を聞いてみた。
鈴木監督の『丸』のことはもちろん知っていた、という降矢さん。
「でもまさか僕たちの活動を見ていて、しかもこういう映画館をやっていて、そこに呼んでくれるなんて思ってもいなかった」という。「それにこの環境の映画館は、世界を探しても、ちょっとないでしょうね」と、CINEMA VOICEそのものにも驚いていた様子だった。
鈴木さんもこう言う。「映画の配給は博打みたいな部分もあるから、こうやって個人配給のアクションを起こしている降矢さんたちの活動に感心していました。会ったことはなかったけれど、同じように映画を作って、見せましょう! という身からしては、リスペクトできる存在でした」
二人は「またグッチーズの配給の映画を、CINEMA VOICEでかけましょう!」と言って、しばらく話し込んでいた。

松本美枝子